キマ進捗「もう帰った方がいい。送っていこうか」
デスクの上の書類をまとめる手つきには無駄がない。マサルはダンデの方を見て、遠慮がちに微笑んでから、「いえ、自分で帰ります」とだけ答えた。
知っている。マサルがこうして一人になりたがるときは、本当にそっとしておくべきなのだ。少なくともダンデは彼にかける気の利いた一言を持ち合わせていないし、彼の心を溶かすだけの体温を持ち合わせていない。それが悔しくないと言えば嘘になるが、ある種公然の秘密ともいえるその事実はマサルとキバナの幸せそのものに他ならなかった。疲れ切った顔で、やはりマサルは笑った。そんな顔をされれば、ダンデも二の句は告げないままだ。デスクに備え付けられたワークチェアは、マサルの体には少し大きすぎる。立ち上がろうとした拍子に少年がたたらを踏む。こんな具合では振り落とされても文句は言えないと判断したのか、相棒のラティアスに乗って帰ることは諦めた様子であった。
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