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    ぴぴか

    @pipi__know

    ウツハン♂とキバマサ

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    ぴぴか

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    ぽちぽち書き始めたウツハン♂進捗

     確かに、愛しているのだと思った。行く末を案じ、これ以上ないほどにその無事を願い、数多の祈りで愛し子が潰されてしまわぬようにと祈る。この自分の様を、「愛している」以外の言葉では到底表せまい。男は思う。愛している、長い時間をかけて己の手で育て上げたその青年のことを、男は確かに愛している。どうしようもなく、愛している。己への見返り抜きに、自分の持てる全てを青年に与えたいと思った。だから、だからこそ、男はかつて自分の後ろをついて回り、己を兄と呼び慕った愛し子を「愛弟子」と呼んだ。青年自身は気付いていないかもしれないが、本当の意味で、青年は男にとって特別な存在に他ならなかった。
     故に、その動揺と気付きは、青天の霹靂であった。
     風が吹いていた。砂埃、火薬の匂い。怒号にも似た叫び、咆哮。地を駆ける音。暴風。今まで何度も何度も耳にしてきた、太刀を振るう音。
     きれい、だと思った。場違いな高揚であろうか。否、そんなはずはない。今男の目の前で太刀を振るい、里の危機を救わんとするその青年こそ、男の言う「愛弟子」である。ハンター見習いとして連日の厳しい訓練に励む後ろ姿が思い起こされた。走馬灯でもあるまいし。そう冷静に思うのに、男の視界は彼の意志とは関係なく歪むのである。災厄の元凶であるとされる古龍・イブシマキヒコを屠らんと何度も立ち上がるその姿に、男の心は、間違いなく。頬を伝う涙を拭う術すら知らず男は立ち尽くす。胸が高鳴る。足が、竦んでいるのか、これは。
    「…俺の愛弟子が、英雄になろうとしている」
    この胸の高鳴りは、愛弟子が英雄へ羽化しようとしているが故か?そんなはずはない、男とて分かっているはずだが、どうにもならず取り留めのない思考を反芻する。手を伸ばしても届かない、流れ星か、あるいは、雷か。健やかであれ、穏やかであれと願った彼のいのちが、師の手を離れてもなお。
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