黄昏色のロマンス 今日の放課後の部活動は中止、と聞かされたのは先日の全校朝礼でのことだった。ぽっかりと空いてしまったこの時間をどうしようか、思いあぐねた三井寿の足はいつの間にか屋上へと向かっていた。
さっきまでいた教室では、久々に彼と一緒に帰るのを楽しみにしていた堀田がまとわりついていたのだが、そいつを追い払って独りになると、カバンを下げたまま屋上に通じる階段をゆっくりと上り始めた。
練習がないのなら、さっさと帰って勉強でもすればよいものだが、そんな気分にもならない。バスケから遠ざかっていた二年余りの間、自分はいったい何をやって過ごしていたのだろう。時の経つのがこんなに遅く感じられるなんて……
少し西に傾いた太陽の光はまだまだ眩しく、日陰を選んで腰を下ろすと、初夏の爽やかな風が頬を撫でる。髪をかき上げようとして、風に揺れていたはずの、その長い髪がないのに気づくと、不思議な思いにとらわれた。
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