かわいいあのこ 1
物憂げな灰青色の瞳。緩くウェーブし、日が当たった部分が暖色に輝くブルネットは肩につくかどうかの長さで、横顔に落ちかかって白い肌を際立たせる。小花柄のレースで飾った象牙色のアンティークドレスが夏の陽射しに透けて揺れるさまは、現実感が薄くどこか霊みたいだ。けれどその人は消えたりはせず僕に気がついて顔を上げ、まだ夢の中のように薄い唇を少し開きっぱなしでゆっくりと首を傾げた。
こんなに可憐で美しい人は見たことがなかった。
その木炭画は作者のスティーブ・ロジャースが描きかけで満足していないと語る今の状態でも人を惑わす魅力を放っており、ロジャースのアトリエで偶然その絵を目にしたコールソンが一目惚れをした。アトリエに置かれていてはもったいない、手放さなくてよいのでぜひ展示だけでもと熱心に口説いたが、画家は頑として首を縦に振らず、スティーブの絵のファンであり強力な後ろ盾であるティ・チャラも巻き込んで談笑中にそれとなく公開したい旨を伝えても結果は変わらなかった。
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