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    Valove1222

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    Valove1222

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    概念ベフ(?)
    先祖?前世?ネタなので、ベフといえるか怪しい……ということでポイピクに投げます。

    王子と魔法使い 一面緑の、それはとても広い平原。
     ひとりの王子とひとりの魔法使いが、ゆっくりとその中を歩いていました。 
     
     『王子』はとある家の二番目の子供でした。しかし兄ばかり贔屓する両親と意地悪な兄が嫌になって家を飛び出したのです。
     どうせなら元の家よりもっともっと大きな家を作ればいい。そうだ、たくさんの領主たちの諍いが耐えない土地で、王様になってしまおうと考えたわけです。
     そして王様になるために旅をしていると、深い深い森の奥で魔女の子だという男を見つけました。それが、『魔法使い』でした。
     魔法使いはとてもとても生意気で口が悪かったけれど、それがどうでもよくなるくらい魔法の腕がよかったので王子は魔法使いを仲間にしました。
     けれど魔法使いが仲間になってから、行く先々でいろんな事件や事故が起きるようになりました。魔法使いはそれが自分のせいだと言うのです。
     でも、王子はそんなことぜんぜん気にしませんでした。旅には刺激がつきものです。わくわくしている王子を見て、魔法使いもだんだん不幸を気にしなくなりました。
     
     王子は本当は王様と呼べと言ったのですが、魔法使いが
    「まだ王様じゃないでしょー、王様の卵なんで王子サマ。あ、なりそこないサマのほうがいいですかー?」
    なーんて意地悪を言うので、王子はしかたなく王子という呼び方を認めてやりました。
     
     


     ふたりきりの旅を終えて、王子は王様になりました。
     王様になるなら、その後に続く子どもを産まなければなりません。
     王様は歴史のない新しい王様。だから、古くて権力を持っている隣国の女を王妃にしました。
     
     宮廷魔法士になった魔法使いの周りは、昔と変わらず不幸なことばかりです。
     魔法使いが歩くとお城の窓が急に割れました。
     烏が鳴いたかと思うと急に雨が降って、王妃がだいすきなお花がみんな腐ってしまいました。
     みんながみんな、魔法使いがなにか呪いをかけているのか、呪われているのかと疑いました。それが当たり前の反応です。
     でも王様だけは、少しもそんなことを考えていませんでした。
    「いいから、ここにいろ」
     こっそりお城を去ろうとする魔法使いを、王様は許してくれませんでした。
     もうふたりが一緒にいる意味はありません。
     王様にはたくさんの家来と、王妃様がいます。ひとりに飽きることもないのです。
     魔法使いはお城が大嫌いです。
     人の欲しか存在しない、汚い掃き溜めのような場所が、居心地悪かったのです。なによりも、そこで王様をしている王様が、大嫌いで大嫌いで大嫌いで、しかたなかったのです。
     それでも結局、魔法使いはお城に留まることにしました。
     
     やがて、王様と王妃の間に子供が産まれました。それはそれは王様にそっくりな、可愛い王子様でした。
     魔法使いは、かつての『王子』そっくりの王子様をそれはそれは可愛がりました。王子様の本当の母親以上に、可愛がりました。
     ある日、気が触れた王妃は魔法使いを塔に閉じ込めて、なんどもぶって、最後には鋭い刃物でお腹を刺してきました。
     
     どくどく、どくどく。
     穴のあいたお腹から、たくさんの血があふれています。
     
     王妃は魔法使いが大嫌いでした。
     王様も王子様も、魔法使いが大好きでした。
     だからふたりに大切にされている魔法使いが許せなくて、閉じ込めて、いじめて、めった刺しにしたのです。
     
     どくどく、どくどく。
     からだがちょっとずつ寒くなっていきます。
     
     魔女はほんとうは、死んだら木になります。 
     それを人間に知られないように、森の奥ふかくで暮らしていたのです。
     でも、人間の欲の中で長く暮らした魔法使いは、もう自然には還れません。けれど、人間のようにからだを残して死ぬことも許されません。魔法使いのからだは、石になりかけていました。
     
     魔法使いはふと、まだ王子だった王様とふたりで草原を歩いたことを思い出しました。
     そまつな干し草の上で寝っ転がって、夜通し星をながめました。
     王になっても王妃なんてめとらないと抱きしめてくる王子を何度もたしなめて、そう言ってくれることが一番だと心の中で喜びました。
     
     ああ、そうか。
     魔法使いは気づきました。
     生まれてから王子に会うまでの不運、お城でたくさんいじめられたこと、つめたい地下牢で死んでいく最期。
     一生分の不幸をもってしてもあまりある幸福が、王子との旅の日々だったのです。
     だから、死ぬことなんて怖くありません。
     
     ころしてやったと喜んでいる王妃の髪の毛をつかんで、呪いのことばを吐きました。
     子を産むなんてお前じゃなくてもできる。でも、あの男の道を一緒に歩いたのは魔法使いだけだと、言ってやったのです。
     もう死んだと思った人間が動いたのが怖かったのか、王妃はいちもくさんに逃げていきました。 
     
     魔法使いはたおれて、幸せだった記憶を何回も思い出します。
     目の前が冷たい石畳でも、魔法使いには、あの時歩いた草原に感じるのです。
     魔法使いは穏やかにほほえみました。
     そして、そして。

     
     
     
     
     
     
     
     
     とうとう、なにも見えなくなりました。
     
     
     
     
     
     
     
     
     
     王様は王位を譲ったその日に、王妃を拷問にかけました。
     何年も何年も、魔法使いを探しました。
     でも、どんな国を探しても、どんな森の奥へ行っても、魔法使いは帰ってきてくれません。
     王様は、魔法使いがもうこの世にいないことに気がつきました。
     魔法使いを殺したい一番の人間は、王妃です。
     だから、王妃の役目がなくなってから、拷問にかけました。
     つめをはぎました。ほねをおりました。ねむらせませんでした。みずをたくさんのませました。けものににくをかませました。はりでぜんしんをすこしずつさしました。
     王妃はとうとう、魔法使いを城のはずれの幽閉塔にとじこめて刺し殺したと、白状しました。
     
     王様がそこにいっても、魔法使いの遺体のかけらもありません。ただ、冷たい牢と、なぜかたくさんの石が転がっています。
     王様はがくりと膝をつきました。
     どうすればよかったのでしょう。
     ただ、魔法使いに隣にいてほしかっただけでした。
     あの草原を歩いた日々のように、一緒にいたかったのです。
     
     城へ戻ると、王妃はすでに死んでいました。
     そのあと、王様がどうなったか、しるひとはいません。
     
     
     魔法使いが死んでから、数日。
     とあるひとりの盗賊が塔に忍びこみました。
     盗賊は牢の中から、ひとつふしぎなものをみつけました。
     たくさんの石の中に隠れていた、数字が刻まれた指輪。
     盗賊はしめしめと、その指輪を盗み出しました。お城にあった指輪です。きっと高く売れるに違いありません。
     


     魔法使いの心臓から生まれた指輪がたくさんの人の手にわたり、不幸を呼ぶ指輪と呼ばれるようになるのは、別のお話。

    めでたし、めでたし。
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