全力マウント 少し明かりを落とした寮の部屋のなかで、悟はおもむろにポテトチップスに手を伸ばし口に運んだ。視線はテレビに向けたままだ。画面はアクション有りミステリー要素有りぶっ飛んだ設定もうまく生かしていると話題になったエンタメ映画が山場を迎えていた。
果たして主人公達は危機を乗り越えられるのか。ついに追い詰めた犯人の正体は一体、という手に汗握るシーンだ。いままさに、というシーンで、こつんと左肩に衝撃があった。小さな画面に釘付けになっていたため反応が遅れてしまったが、え、と思いながら悟が思わず隣を見れば、しなやかな黒髪があった。
「え……傑?もしかして、寝た?」
絞られた音量で声をかけてみるが、案の定返事はない。そっと顔を覗いてみると、瞼はぴったり閉じられ、傑は穏やかな寝息だけを繰り返していた。傑が寝ている、と認識した途端、悟の心臓はどくどくどくと馬鹿みたいに速度を上げていく。
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