手を伸ばせば届く距離 自分の心に気づいたあの時から、[[rb:俺 > パトリック]]は自分に誓いを立てた。「この想いは絶対に表には出さない」と。けれど、[[rb:想い人 > エミリコ]]は手の届かない距離にいるわけじゃない。同じ棟の中で、等しい時を過ごしている。廊下でばったり会うなんてことも、それこそ日常茶飯事で……。
「おはようございます、パトリック様!」
色とりどりの花が一斉に咲き誇っているような笑顔が、[[rb:俺 > パトリック]]の胸の鼓動を速める。いいや、ダメだ。ドギマギしているのを悟られてはいけない。
「リッキーも、おはようございます!」
エミリコは、今日も笑顔を輝かせている。きっと誰に対しても、分け隔てることなく……。[[rb:俺 > パトリック]]はエミリコに微笑みかけられる中の一人にすぎないのだ。エミリコにとっての[[rb:俺 > パトリック]]は、特別でもなんでもない一人のシャドーでしかない……わかっているさ、そんなことは。
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