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    ぶんぶん

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    腐向け。CPなんでもごちゃごちゃ。R18あり

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    R18になるはずだった尻切れトンボのガラガラ男×田畑小説

    旧友じっとりと重さを持った手袋を外す。
    年季が入りひび割れた合皮が血液を吸い、かつての光沢を失っていた。
    生白い手が露出する。
    手袋ををずっと付けていたせいか肌がかぶれていた。いつか揉み合った時に力を入れすぎたのか、爪が割れて血が出ていた。
    目視してやっとその痛みを認識した。
    最近感覚がおかしくなっている。
    鈍っているのではない。まるで体が痛みを感じることを忘れているかのように、怪我をしていると頭で認識しなければ傷に気付きもしないのだ。
    商店街の方から濁った煙が出ていた。
    段々と風に溶け、寺尾の元には香ばしい香りだけが届いた。
    焼き鳥屋か何かがあった事を思い出す。
    排気口から立ち昇る煙を眺めた。最後に食事をした日はいつだっただろうか。
    長らく何も口にしていないのに、不思議と空腹を感じない。
    寺尾は商店街に背を向けた。一歩踏み出すごとにチャッ、チャッと音を立てて広がった血液が跳ねる。
    自分が喉を切り裂いて殺害した男には目もくれず、暗く染まり始めた住宅街を歩いた。


    寺尾は少年の首に当てていた刃物を下ろした。
    髪を乱暴に掴み、うつ伏せになるよう押し倒す。
    少年の体をガラガラ男の真っ黒な影が覆った。
    夕陽を受けて輝いていた髪は、影が落ちても綺麗な色をしていた。
    少年が目線だけで寺尾を捉える。

    「……寺尾」

    名前を呼ばれて、やっとその少年が旧友であった事を思い出した。
    しかし記憶にある田畑と目の前にいる少年とが結びつかない。うつ伏せにしたまま、できる限り首を捻らせ顔を覗いた。
    アスファルトに押し付けていた頬に痕が残っている。見開いた目に溜まっていた涙がぽろぽろと流れ、肌に付着していた砂や小石を洗い流した。
    血の気の引いた唇が震えている。過度の緊張からか、時折体がひきつけを起こすように痙攣している。
    記憶に残る精悍な顔立ちは見る影も無くなっていた。
    あの聡明な田畑が、ガラガラ男を前にして怯えている。同性すら憧れるこの整った顔を自身が歪めているのだと思うと、耐え難い程の加虐心をそそられた。
    ナイフの刃を眼前に晒す。先程殺害した男の血にまだ濡れていた。
    押さえつけている背中が激しい呼吸に合わせて上下する。見せつけるようにしながら刃先をゆっくりと喉元に近づけた。
    田畑は大量の脂汗をかきながら逃れようと体を捩っている。
    やめてくれ、助けてくれとか細い声が聞こえた。
    刃先で喉を撫でると体の震えが大きくなった。
    喉仏の下辺りに峰を添わせ、腕を真横に引いた。
    当然皮膚が切れることなどなかったが、刃に付着していた血液が一本、赤黒い線を残した。
    くぐもった悲鳴をあげ、田畑の体から力が抜けた。
    たとえ体が傷ついていなくても、脳が傷を受けたと誤認すれば死に至ることがあるらしい。ずっと前に見た実験の記事を思い出した。
    田畑の呼吸を確認する。頬に涙の跡ができていた。上半身を持ち上げ、ずるずると引きずって歩く。
    いつの間にか日は落ち、街灯が疎に灯っている。
    ぐったりとした田畑の体が、闇へ闇へと飲み込まれていった。
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