ジュニ兄「おかえり、兄さん」
そう声をかけると兄は、眉を下げて笑う。
「…あぁ、ただいま、東海道」
困ったような、それでいて安心したようなその表情にゾワリと背が震えた。
***
東海道が兄の弟になったのは数日前。知り合ったのはそれから2、3年ほど前の話になる。
数日前のあの日、たまたま兄に助けられ、東海道はめでたく彼の弟になったのだ。純粋な吸血鬼の兄は定期的に人間の血を必要とする。しかし、あの日から人間に苦手意識を持つ兄に、人間に近付けとは無理な話。そのため、前から知り合って居た東海道に父が目をつけたのだ。
それに東海道は両親がいなくなった。ちょうど良かったのだろう。手近な人間で、兄に警戒されておらず、人間達も探す者がない。なにより、東海道自身が快諾した。面倒ごとがないから。