長岡駅(2017.10.16)「見ましたか!上越上官!」
「え、何⁉︎」
急に信越が声を上げるので驚いて彼を見る。珍しく、目を輝かせてこちらを見る彼に嫌な予感しかしない。
***
休憩室で一緒になって、そのまま流れでダラダラ過ごしていた。目の前に上官がいるのに、相変わらず緊張感のない男だ。東北の部下みたいに気に入らない訳ではなく、気の良い男なのだけれど。
「ねぇ、信越」
「なんです?」
この男の静かな視線が、僕は苦手だ。
「あ…」
温度のない視線は、どうしても。
「おいコラ!信越‼︎」
バタバタと現れた先輩に、信越は「ゲッ」と表情を歪めた。どうやら、また何かやったらしい。
「おうおう、元本線の名が泣くぜ、本線様よ?」
「いや、俺、本線だから!」
「あ?」
「いや、ハイ。スミマセンデシタ…」
「先輩、ガラ悪い…」
「お前は黙ってろ。今日こそ、コイツに言わねぇと俺の気がすまねぇ…‼︎」
そう言って信越に説教を始める先輩を眺める。こうなった先輩は、落ち着くまで待つのが1番だ。
そう思って静かにしてたのに、
「見ましたか!上越上官!」
「え、何⁉︎」
言いながらこっちを見た信越に、嫌な予感しかしない。
あと、信越がずっと窓の外を見てたせいで先輩の表情が凄いことになってるんだけど…!
思わず返事しちゃったことを後悔しながら、信越を見た。
「小さな男の子が!手を振ってくれましたよ!」
あ、ヤバい。
そう思った時には遅かった。
「反省しろぉぉぉッ!」
「しんえつーーっ‼︎」
吹っ飛んだ信越(比喩じゃない)に駆け寄ろうとすれば、先輩に腕を掴まれた。怒られるのかな?僕は何もしてないのにな、なんて思いながら、先輩を見る。
「行くぞ。お前にあのバカが移っちゃ敵わんからな」
ちょっと嬉しいなって思ったのは内緒