no title その子と初めて会ったのは、十月の最後の日だった。
小さな町のクリニックからの紹介状と共にやってきた少年は、僕が前世で愛した姿や色彩をそっくりそのまま持つ少年だった。
オリーブのような柔らかな青碧の瞳、利発そうな眉と高い鼻梁。小麦の穂に似た艶のある黄金の髪。紹介状やカルテに書かれた名前も、僕の愛した漢字と響き。
しかし、その少年は前世での記憶を持ってはいなかった。彼は僕をかつての恋人ではなく、「ごじょう、せんせい」とガラスのように透き通る声で、僕を主治医として認識した。
それでも僕はまた恋をした。
だって僕は七海のことが大好きだったから、七海の美しく儚い少年姿を大好きにならないわけがない。この小さく細い身体が年齢を重ねるごとに強く逞しく、それはもう見事な肉体美になるのを知っている。大きな瞳が次第に知虜に富み怜悧になっても、その奥に慈しむあたたかさが残るのも知っている。
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