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    Sak_i

    二次創作【腐】
    https://twitter.com/pulsate_s

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    Sak_i

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    ウラ良。最終話以降。お付き合いしてます。

    ##電王
    ##テキスト

    あこがれ。(ウラ良) 憧れていた景色がある。
     昔、父さんと母さんが経営していた珈琲店。
     改造されて今は、過去とは違ったお客さんが来る。
     古めの扉が開くと光が差し込んでくる。
     僕はいつもテーブルを拭きながら、その光景を眺めている。
     光とともに訪れるコート姿の男性を、姉さんはそっと出迎える。
     口元に花のような笑みを差し、ノスタルジックなミルをカウンターに残して。


    【あこがれ。】


     この日、敵が現れたのは良太郎がのどかな散歩を嗜んでいる時だった。平日火曜の、バイト定休日。敵は はぐれイマジンで、ちょうどウラタロスが良太郎周辺を浮遊して一緒に散歩していたところだったので、そのままウラタロスとふたりで片付けた。
     電車斬りをなんとか極めたライナーフォームの良太郎の背を護り 青い海亀イメージのイマジン体で実体化したウラタロスが もう一人の雑魚を成敗すると、ふたりで ふぅっと溜息を揃える。時の運行に害なす悪者、私情を挟めば、馬に蹴られて死んでしまえのお邪魔虫。

    「忘れかけた頃に、まだはぐれイマジンが出てくるね」
     変身解除し、良太郎が呼びかけると 海亀イマジンのウラタロスは『やれやれ』とばかりに吐息をついた。
    「たまの休日くらい平和に過ごせないものかなぁ」
    「仕方ないよ。それでも前みたいに しょっちゅう闘ってるわけじゃないから、適度な運動になるし」
     ウラタロスが手伝い始めたことにより、客層も増え繁盛しているミルクディッパーは、またウラタロスの手に助けられている。明日からまたバイト三昧。のんびりデートする暇もない。
    「それじゃ、ボクはリョータローの中に戻るよ」
     平日真昼の児童公園。いつにも増して人気はない。しかしいつまでも実体化したままで居ると誰に見られるとも知れないので、ウラタロスはそう言って良太郎の中に戻ろうとした。その腕を、咄嗟に良太郎が引き止める。
    「待って、折角だしもう少しこのままでいようよ」
    「それじゃあ、砂体で…」
    「そうじゃなくて、もう少し、そのままで」
     良太郎にせがまれてウラタロスは自分の手と姿を眺め下ろした。いつもと代わり映えない亀モチーフの怪物姿だ。
    「このままで?」
    「今は誰もいないから」
     リョータローがそう言うならいいけどさ、と
     ウラタロスは良太郎と並んで木のベンチに腰かけた。
     良太郎がデンライナーに乗る機会は減り、ミルクディッパーでバイトを手伝ったり、たまに街中をいっしょに歩くウラタロスは基本的に着ぐるみ仕様。闘う時は、ロッドフォーム。こうして海亀イマジンのウラタロスと接する機会が今では少ない。けれど元々 自分のイメージの中から具現された姿の所為か、この海亀のウラタロスが良太郎は好きで、久しぶりに目の前にその姿を見ると、良太郎はそのままの彼ともうしばらく居たくなったのだ。

     どこをともなく見詰めながら脚を組むウラタロス。
     何を話そうか迷っていると自然と肩にウラタロスの腕が回って来る。
     街中なのに、微かに海の香りがする。

     このままここでもう少し、いっしょに居ようと言い出したのは自分なのに、妙にそわそわしてくる。何か言葉を交わしたいような、…でも何も言葉にならないような。
    「あの、さ、 えっと、」
     無理して喋ろうとして良太郎が詰まっていると、ウラタロスは全部わかっていそうな顔で笑って、良太郎に顔を近づけてくる。
    「今更ボクたち、無理矢理に何か、語る必要はないって。どうしても無言の空間が気まずけりゃお空の下でやらしいことにでも耽ってみる?」
     青姦、したことないしね。と。ふざけるウラタロスに顔を赤くし、良太郎は『もうっ』 と唇を尖らせた。おこると少し、緊張が抜ける。
     ウラタロスが自分に憑依している時や、着ぐるみを着て辺りにいる時は全然平気なのに、こうして海亀の彼と居る時だけ妙に戸惑ってしまう。なのにウラタロスは、いつもウラタロスだ。
     ある種、夢のような『デンライナー』という空間の中だけでなく。
     ウラタロスが、隣にいる。
     先刻の闘いでウラタロスと合わせた背中にまだ微かな熱を感じ、良太郎はほんのり胸を疼かせた。こうして互いが互いの実体を持って伴に戦えるというのは感動的。もしかしたら、今頃ひとりでこのベンチに休んでいたかもしれない時間のことを、時々思う。
     モモタロスたちと出逢ってなかったら。
     ウラタロスと乗車券を共有しなかったら。
     ウラタロスが途中下車してしまったら。
     自分が彼のことを忘れてしまったままだったら。
     彼が消え掛けた時、素直に諦めてしまっていたら。
     過去に置き去りにしたウラタロスがひとり、敗れていたら。
     カイが消えて、ウラタロスも消えてしまったら。
     幾つもの分かれ道を経て結局、今のある奇跡。
     電王になる前まではぼんやりと寂しさを懐きながら送ってきた『時間』のことを、ウラタロスといっしょにいると。良太郎はよく思う。

     彼と、こうしてデートが出来る。 思えば、すごいことだ。

     良太郎が隣のウラタロスを見上げると、ウラタロスも 『ん?』 と良太郎を見る。―いつまで、いっしょにいられるんだろう。
     いつまでも、居ていいのかな。
     ウラタロスが消えなかったということは、誰にともなく彼と過ごす時間を、許されたような気になる。
     卒業して別れたままもう一生逢う気がしないクラスメイトみたいに、いつかはウラタロスやモモタロスたちと別れる日が訪れるのだと思っていたこともある。一刻も早い それを望んでいた時期もある。最初の頃。
     だんだんと、みんなと別れたくないと思い始めて。みんなとの繋がりが消えなければいいと思い始めて。ウラタロスを好きになって。好きになってもらって。 それでも、いつかは、離れなければいけないんだろうと思っていた。自分の気持ちを抑えていた時期もあった。
     初めから、諦めているみたいにウラタロスを好きだった。
     桜井と あんなに愛し合っていた姉が別れ別れになってしまったのに、自分が誰かと幸福に添い遂げる、なんて未来も色んな意味で考えられなかったし。
     でも今は少しずつ、おじいちゃんになった自分が、やっぱりおじいちゃんになった海亀ウラタロスといっしょにいるヴィジョンが 視え初めて来た。気がする。ずっといっしょにいていい気がする。―ウラタロスは、どう思っているのか知らないけど。
    「おじいちゃんになったボク、ってのもなかなか想像に難しいけど、リョータローと別れ別れになる未来、ってのも何だかもう、想像つかないねぇ?」
     ふと、突然そんなことをウラタロスが口に出す。
     ウラタロスのにこりとした顔をはっと見上げて良太郎は動揺に口元を引き攣らせた。
     もしかして、聞いてた? ウラタロスはいやらしく微笑むだけだ。
     こうしてたまに自分の心の声が勝手に聴かれてしまうから、下手に彼への思いを思考してみることも出来ない。別段、好きだとか愛してるとか思ってみてそれが聴かれていても、困ることはないのだけれど。
     すけべ、と脳内でウラタロスの悪態をついて良太郎がそっぽ向くと、隣でウラタロスがくすくす笑った。
     こういう、きっと、フツーの恋人同士なら当たり前の穏やかささえ自分たちのものだと思うと不思議。
     フツーの恋人だったら、ここで手を握り合ったり。
     誰にもないしょでこっそりとキスを、したりするのかも。
     またチラリ、良太郎がウラタロスを覗くとウラタロスも同じ気持ちみたいな顔をして、良太郎の肩を引き寄せながら彼の顔を近づけてきた。
     涼しい海の香りが一段濃くなり、良太郎の顔面に陰が差す、と、

    「すげー! かいじゅうだーー!!」
    「ほんとだーーーー!!」

     どこからともなく現れた子どもたちが騒いで公園に集まって来て、良太郎とウラタロスはキスの間際で飛び跳ねた。
     瞬時に離れて、そわそわし出す。
     こちらに寄って来る子どもたち。イマジン体で実体化したウラタロス。もう姿を消すことも出来なくて、どうしようと焦り顔をするふたり。―けれど子どもたちは海亀イマジンのウラタロスこそ、怪獣のコスチュームに身を包んだ人だと思い込んでいるらしく、恐がりもせずウラタロスを取り囲んで来る。
    「なんでこうえんにいるのー?」
    「つよいのーーーー?」
    「ちょ、ちょっと…」
     子どもたちに引かれてウラタロスは立ち上がる。
     子どもたちはウラタロスの身長の、大体半分くらいしかない。
     すっかりこの公園が ヒーローショーの後の『ぼくと握手』会になってしまって、ウラタロスは戸惑いながら助けを求めるように良太郎を見た。
     本当なら、一般人に怪物の姿を見られるってヤバイんだけど。
     でも子どもは恐がっていないし。
     ウラタロスはワルモノじゃないし。
     それより何より、いつもクールぶってるウラタロスが。
     詐欺師のナンパ師のウラタロスが。子どもに囲まれて戸惑っている図が珍しくって。
     良太郎はつい微笑ましく思ってしまった。
    「いつもリュウタロスにしてあげてるみたいに、たのしいお話でもしてあげたら?」
    「そんなお花みたいに笑っていないで、助けてよ、リョータロー」
     情けない声でウラタロスは訴える。
     そんなウラタロスにしがみついて、昇り始める元気なコ。
    「ってゆーかおサルみたいにブラ下がるんじゃないよ」
     絡み付いてくる子どもを鬱陶しそうにあしらう。そんな『怪獣』の反応をこそ愉しく思う子どもたちはますますウラタロスに群がってくる。
     ああもうどうすればいいんだよ!! …なんてガラ悪く叫びながらもウラタロスは、催促されるまま悪役に準じて子どもたちを振り回したり、追い掛け回されたりする。
     ベンチに大人しく座ってその光景を眺めている、良太郎はすっかり、ヒーローショーのバイトをしている恋人を見守る気持ちだ。――なんか、…かわいい。


     そのまま小一時間、
     子どもたちと戯れて、子どもたちが飽きて帰って。
     再び良太郎とふたりに戻るとウラタロスはベンチに腰掛け直し、はぁっと疲れた溜息を吐いた。
    「子どもって案外、順応性があってスゴイ」
     たまに大人しい子に『怪物のウラタロスとどういう関係か』と尋ねられたりしながらも、殆ど子どもに遊ばれるウラタロスを眺めているだけだった良太郎がそんな風に呟くと、ウラタロスは隣でがくりと頭を垂れる。
    「…怪獣って。」
    「おちこまないの。かっこいーって、人気者だったじゃん」
     正直極まりない子どもたちに、直球で、現実を突きつけられてしまった。
     どうせかいじゅうだよ、などと拗ねるウラタロス。そういう彼もまた珍しい。
     目撃されたのが果たして子どもで、運が良かったのか、悪かったのか。きっとオトナだったら裸足で逃げ出すか通報されたり、別な形で大騒ぎになっていたのかもしれない。ウラタロスは悪くない。でも姿が、人間、と違うのは事実だから。
     しかしこんな問題も。
     ウラタロスが実体を手に入れなければ、無かったものだ。
    「やっぱりそろそろ、リョータローの中に戻るよ」
     疲れた声でウラタロスがそう言う。
     今までのんびり微笑んでいた良太郎は、ハッとしてまたウラタロスを引き止めた。やっぱりこんな、『彼』と居る楽しい時間が。なくなってしまうのは惜しい。
    「ま、待ってウラタロス」
    「…リョータロー」
    「待って、もうちょっと、」
     疲れたウラタロス。
     人に見られて、『怪獣』と呼ばれてショックなウラタロス。
     これはわがままなのだけど。
    「ねぇ、お願いがあるんだけど、」
     ふと、気づいてしまった。
     今までは有り得なかったことで、今は叶えられることがある。
    「…その姿のまま、僕んち、来てくれないかな?」
    「…え?」
    「僕、先帰ってるから、時間を置いて来てくれないかな?」
    「どうして?」
     突然の良太郎の発言にウラタロスが怪訝にする。
    「リョータローに憑いていっしょに帰るんじゃダメなの? だって、いつの間にかもう夕方だし、この姿のままウロついてたらまた誰に見つかるとも…」
    「でも!! ――…でも、今のウラタロスのままで歩いて来てほしいんだ」
     理由も告げずただ願う。ウラタロスとしてはもう気疲れのするこの姿で居たくなかった。けれど良太郎の瞳は切実で、ウラタロスは疑問を抱きながらも良太郎の願いを聞いてやることにした。
     そして良太郎は一足先に公園から去ってしまう。
     ぽつりと取り残されたウラタロスは人通りが目立って来ると近くの木陰に身を潜め、時間が経つのを待っていた。
     後から良太郎の部屋に来い、と言う。いっしょに帰ったのでは、何か悪いのだろうか? 怪物姿が一般人に目撃されて騒ぎになったらまずいのに、良太郎がそんなことを言い出した理由がわからない。この公園から良太郎の住む部屋へのルートは覚えている。そこへ どういった道順で行けばあまり人目に触れないか考えながら、ウラタロスは改めて、良太郎の発想が意味不明だと思った。――まぁ、そんなとこも面白いんだけど。


     良太郎は、相変わらず不運だ。
     だから帰り道にも人一倍時間がかかる。
     後から来い、と言われたものの数分遅れて追いかけたのでは、寧ろ良太郎より早く彼の部屋に辿りついてしまう可能性が高い。
     ウラタロスはまた小一時間ほど公園付近で時間を潰した後、人目を憚りながらこそこそと良太郎の部屋を目指した。
     砂体になるか光体になって飛んで行けば、一瞬だ。その距離を人に見られないよう気を遣いながら、愛しいあの子の願いの為に、移動する。そんな自分の滑稽さすら愛しい日常。
     ウラタロスが苦労しながら良太郎の住むアパートに辿りつく。と。
    「い、いらっしゃい、ウラタロス」
     ウラタロス以上に此処まで帰って来るのに苦労したらしい良太郎が、先刻別れた時よりも汚れた格好で、帰ったばかりの慌しさを思わせながらウラタロスにドアを開けた。
    「…大丈夫?」
    「う、うん」
     髪に、葉っぱがついている。
     今日は晴れなのに何故か服の一部が濡れてて。
     今まさに自分が帰宅したばかりの良太郎は、第一声にウラタロスに心配され、引き攣らせながらも笑って頷いた。
    「あ、上がって、ウラタロス」
    「――うん。えーと、…お邪魔しマス」
     やっぱり、遅れて来て正解だった。
     いっしょに帰っていれば良太郎をそんな目に遭わせなかったのに、などと思いつつ。
     そして言われた通り、良太郎の望むイマジンの姿で、少し遅れてやって来ただけだけど。良太郎の願いは、これでよかったのか? と、案じながらウラタロスは良太郎の部屋に上がり込んだ。そう言えば良太郎の部屋に玄関から入るのは初めてで、だけど、脱ぐ靴がない。
    「リョータロー、何か雑巾ない?」
     足の裏を拭く雑巾を求めると、良太郎はハッとしてすぐ、それを用意する。
     汚れた足の裏を温かい雑巾できれいにしながらウラタロスは、何だかペットのような自分が情けなくなった。
    「――で、」
     良太郎は普段の落ち着きを失くし、どこか焦るようにやかんを火にかける。それからウラタロスに指摘された葉っぱの飾りを髪から払って、ベッド周りを片付ける。
    「お望みは叶った?」
     ココに座って、と敷かれた座布団。
     ウラタロスは大人しくその上に座り込み、良太郎がインスタントの珈琲を入れてウラタロスの向かいに落ち着いた頃、そっとたずねた。
    「う、うん」
     落ち着いた、けれど、良太郎はまだどこかそわそわしている。
     赤い顔もしている。
     良太郎のベッドにほんのり背を凭れて珈琲を飲むウラタロスを見て、はにかんだ後、俯いて、少し泣きそうになる。
     そんな不思議の国の良太郎。
    「なんで『後から来い』なんて言い出したのか、聞いてもいい?」
     相変わらず、センスのすごい、良太郎の部屋。
     良太郎の眠っている時に勝手に憑依して箪笥やクローゼットを漁ったことは何度もある。だから、別段に新鮮な場所でもないのだ、ウラタロスにとってココは。
     それでも訊ねると良太郎は、そっと答えた。
    「――家に、好きなひととか、呼んだことがなくって。」
    「……」
     口に当てていた珈琲カップを、ウラタロスはふと離した。
    「砂のみんなとか侑斗とか、勝手に不法侵入して来たことはあるけど、でも、そうじゃなくて、」
     カップから珈琲が薫る。
     湯気の向こうの良太郎が、嬉しそうに泣き出しそう。
    「――姉さんが、羨ましかったんだ。桜井さんがいつも笑顔で会いに来てくれて、嬉しそうに彼を迎える姉さんが、ずっと羨ましくて、僕も、僕の好きなひとが欲しかった」
     そこでウラタロスはやっと、良太郎の願いの意味がわかった。
    「電王になってウラタロスと出逢って ウラタロスを好きになったけど、でも、 …ウラタロスはそんな風にフツーの恋人みたいに僕んちには来られないんだなって思って、
    …僕は好きな人を出迎える姉さんみたいな ああいう感じは絶対に得られないんだなって思って、――しょうがないけど、…しょうがないから、それでもウラタロスがいいから、諦めて た」
     願い事はあるかと何度イマジンたちが尋ねても、良太郎はいつもさびしそうな微笑みを浮かべながら首を振る。願いがまるで無いわけじゃなく、たくさんたくさん、ありすぎて。だけどそれらは自分の力で叶えたいことばかりなのだと、健気な風に言う。
    「ごめんね、僕のわがままに付き合わせちゃって」
     ただ、恋人同士みたいなことがしてみたかったのだと。
     そうして儚く微笑する良太郎を前にするとウラタロスも苦しくなった。
    「…ワガママじゃないよ」
     いとしすぎて、苦しくなった。
     こんな当たり前のことが難しかったふたり。
     こんな何でもないことが。
    「また来るよ、きっと来る。リョータローと恋しに何度でも」
     今はそれが叶う。
     これから先、何度でも叶う。
    「ボクの車両にもたくさんおいで? 今のリョータローとおんなじ顔で出迎えるから」
     身を乗り出して良太郎の頬に手を差し伸べた。確かな温度と感触を持って、現実の中で良太郎に触れる。ウラタロスに、良太郎はこれ以上ない微笑みを咲かせる。


     ――憧れていた、景色がある。

     昔、父さんと母さんが経営していた珈琲店。
     はにかみながら姉に逢いに来る彼を。
     彼を迎える姉の笑顔を僕はいつも遠くから見てた。


     もしかしたらママゴトみたいでも。

     僕には、憧れだったんだ。


    (終)
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