年月「キテレツってさ、俺がくっつくと嫌がんじゃん」
丸井が言う。ジョギング中に何を言い出すのかと思い、木手は返事をしない。しかしそれに構うことなく、丸井は続けた。
「なのに甲斐が同じようなことしてても何も言わねぇよな」
チラリと木手の横顔を見てみるが、真っ直ぐ前を向いたままだった。初めから答えが来ることに期待していないが、こうも無反応なのはつまらなかった。まぁいいか、と丸井が諦めかけた頃、木手が口を開く。
「甲斐くんとは、ずっと一緒にいたからね」
普段の木手よりも随分と砕けたその口調に丸井は内心驚いた。
「『そういうもの』だと私も思っているんですよ」
「ふーん……」
甲斐以外の比嘉中のメンバーは甲斐ほどの物理的な近さはない。しかし、明確に精神的な距離が丸井や他の選手たちとは異なっていた。それは別に木手に限らない話であり、丸井自身もそういった部分があることを自覚している。しかし、
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