知らないフリ2寝て起きると死神が居て、女神の教えを説かれる。いつもと変わらない毎日。
月顔の男はそんな日常の繰り返しに満足していた。
しかし、最近このルーティンに新たな項目が追加されたのだ。
一通り教えを説き、死神が帰り支度を済ませたら、月顔は言われずとも目を閉じて待つ。
そっと口元に柔らかいものが触れ、離れていく。
「…今日はこれで失礼します」
挨拶の後、ゾグゾは少し名残惜しそうに部屋を去る。
月顔の男は何も言わずにまた目を閉じた。
たまに唇以外も重ねる事があるが、基本は毎日これの繰り返しだ。
ゾグゾから向けられている感情には気がついているし、こちらが気が付かないフリをしている事もバレているだろう。
それでも無視を続けるのはその感情がお互いにとってあまりにも不毛だからである。
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