長らく顔を見せなかった富永から遊びに行く、と診療所に連絡があったのは突然のことだった。喜んで荷物持ちと出迎えを志願したのは一也と宮坂だ。一日数本しかないバスが到着し、懐かしい顔が手を振りつつステップから降りてくる。相変わらずの童顔であまり変わりないようだが、今までの富永と違う部分が一つ。富永の胸元にぶら下がってバタバタと動く生き物を見つけて一也と宮坂は挨拶より何より先に絶叫した。
「「誰なんですか?その子は?!」」
「おい、結婚したなら連絡ぐらいしろ。」
「いえ、してません。所謂シングルファーザーってやつですね。」
「…医者の癖に何と迂闊な。」
「いやはや面目ない。で、うちの太一はどこに行きましたか?」
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