南の島で起こるみすてりー セミが羽化し、本格的に鳴き始めた七月のとある日。ここは芸能事務所EMMC。
二十代向け雑誌の撮影が終わったミヤビとシアが休憩のために控え室に行くと、部屋の真ん中にある机の上にあるものを見つけた。それは今しがた撮影を終えた雑誌の最新号であった。付箋が何枚か挟まっているので、きっとマネージャーがこの休憩の後に控える取材の参考にするようにと置いて行ったのであろう。ミヤビが椅子に座りながら雑誌を手に取り、付箋のあるページを開く隣で、シアが二人分の冷えた缶コーヒーを持ってきて、ひとつをミヤビの手元に置いた。
「…………豪華客船で行く南の島、かぁ〜〜いいなぁ〜〜」
ミヤビの開いたページには人気俳優がインタビューで「もう一度夏休みに行きたい場所」を答えていた。以前行った時に撮ったであろう、何千人も乗れそうな豪華客船をバックに俳優がにこやかに笑う写真を見て、ミヤビは「お金のある人はやる事が違うな」とぼやきを漏らす。
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