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    mina

    @mina_bw18

    CPはブレトワ
    20220831〜書きたいままに
    ブレリンの世界にトワリンが来てる
    R18は18歳未満の方は見ないでください

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    mina

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    ブレトワ/クリア前近く/ブレがぐだぐだしてる/少しメタっぽい

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    きみのそばで会おう
     
     
     ベッドに寝転がったまま、シーカーストーンを取り出し、映し出された画面を覗く。
     すべての塔を解放したから、地図は欠けることなく表示されている。さまざまな地名に、散らばる祠のアイコン。端から端まで、ずいぶんと色々なところへ行った。祠も百二十個を終え、ご褒美と称して特別な服をもらった。トワはこれに似た、緑の衣を着ていたと聞いている。オレには似合うと思えなくて、一度袖を通したきりだ。
     馬宿や村などでよく頼みごとをされたけど、最近は声を掛けられない。神獣も解放し、英傑の魂はみんな無事に解放出来た。白銀種の魔物を倒して、手元にはかなり強い武器が集まった。もちろんマスターソードもある。コログの森での剣の試練は、なんとか終えている。
     だんだんと、やることが思いつかなくなってきた。
    「すべてが終わったら……」
     様子見を兼ねて、何度かハイラル城に乗り込んだことはある。城はひどく朽ち果て、魔物が住み着き、かつての栄華の姿はなかった。オレは上へ下へと探索し、魔物を倒した流れでハイリアの盾、なんてものまで手に入れた。至るところにガーディアンがいて、うっとうしかったくらいか。最初はかなり迷ったが、そのうち道も覚えた。
     だから城に行くことは怖くはない。なのに最近、オレの足が向かないのはきっと。
    「なにしてんだ? きょうはどうするんだ?」
     二階に上がってきたトワが、オレを覗き込む。ふわりとしたいい匂いがするから、朝飯が出来たので呼びに来たのだろう。もう、そんなに時間が経っていたのか。
    「トワ、ここ座って」
    「飯、冷めるぞ?」
    「いいから座って」
     シーツの空いた場所をぽんぽんとしつこく叩けば、首を傾げながらも座ってくれる。早く食べたいけど、いまはトワの近くにいたい。だから起き上がり、シーカーストーンを放って、捕まえるように後ろから抱きついた。
     ほんのり小麦の匂いがするから、机にはパンが並んでるのかな。硬い背中はじんわりと温かくて、トワがここにいるのを実感する。離れがたくて、ぎゅっと力を込めて身を寄せる。
    「どうしたんだ?」
    「どこにも行きたくない」
     出来るなら、ハテノ村の外れにあるこの家で、ずっとのんびり過ごしていたい。ひとりじゃなくて、もちろんトワと一緒に。食材の蓄えやルピーは十分にあるから、不可能じゃない。なんて考えるだけで、実行する気はないんだけど。
     トワはなにも言わず、肩に預けてるオレの頭を撫で、ゆっくり待ってくれている。
    「オレがハイラル城に行って、ゼルダ姫を助けたら」
    「うん?」
    「トワは、いなくなるのかな」
     寂しいひとり旅を狼姿で、時に人の姿でずっと一緒にいてくれた。探索してる時に魔物に遭遇すると、狼姿のトワは勝手に攻撃してた。助かってたけど相手は選んで。特にガーディアンに突っ込むのは、やめてほしかった。盾反射の練習は出来ないし、守りきれないので、おとなしくしていてください。オレ、待てって言ったよね。先輩にきつく言いたくないけど、あの時だけは邪魔になってた。
     少しも聞いてくれなかったことを思い出したら、おかしくて吹き出していた。
    「なにいきなり笑ってんだよ」
    「だってトワ、狼の時だとほんとなんにでも突っ込んでいくから」
     それでも楽しい日々には変わりなくて、手放したくなくなってるんだよ。
     トワがオレの髪をがしがしと乱暴に掻き混ぜる。これはきっと、恥ずかしくて照れてる。その顔、見たかったなあ。照れるトワは可愛い。たまに無自覚でオレの嗜虐心を煽るから、少し困るけど。
    「どうなるんだろうな。お前が姫さんを助けて、俺の役目が終わると」
    「あれでも一緒に戦ったり、祠とか探してくれたし」
    「あれでも、は余計だ」
     本当のことを言っただけなのに。今度は拗ねた声色が聞こえ、だらしなく頬が緩む。愛しくて、この背にますます寄りかかる。
    「やっぱり、元の世界に戻るんだろうな……」
     ああ、トワもオレが姫を助け出したら、終わりと思うんだ。この旅の最終目的地だしな。
     先輩は突然、この世界に現れた。そして記憶を失くした危なっかしいオレが、使命を果たせるよう支えてくれた。その助けが要らなくなるから戻る、とても単純なことだ。
     ハイラル城にトワは入れない。ある場所を境にぴたりと立ち止まり、ついてきてくれなくなる。向かう時はいつもこのハテノの家で待ってもらうので、トワとは一緒に戦えない。つまり、厄災ガノンを倒す時は傍にいない。
    「トワがいなくなるのなら、城には行きたくない」
    「……ブレ」
    「いって! なんで?」
     じんじんと痺れるほど、トワの指で勢いよく額を弾かれた。村で子供たちの相手をしていたからか、こういうことが上手い。見事にきまって、痛いおでこを押さえる。
    「それを聞いた俺に行かなくていいと、言われたいのか?」
     静かな口調と、まとう空気が冷たくてひやりとする。
    「俺がそんなこと言うと思うか?」
    「……言わないと思う」
     オレのわがままを、トワは割となんでも叶えてくれる。でも、いまみたいな時は、ちゃんと止めてくれる。大体私情を優先して、行かなくていいとオレを甘やかすのは、解釈違いだから。うん、言わなくてよかった。
    「わかってるなら、いいんだよ」
     そう、全部わかってる。不満を垂れたところで、どうにもならないことだとわかってる。
     勇者であるオレにしか出来ない、ガノン討伐と姫を救い出すことから逃げる気はない。勝手にいなくなってしまう、この世界の仕組みが気に入らないから、行きたくないだけ。ずっと一緒に旅をしてきたんだ、最後までいさせてよ。
    「このままだと、ガノンに八つ当たりしてしまいそう」
    「お前なあ……」
     ふいにこつりと、オレの頭にトワの頭が重なる。さっきから一転して雰囲気が戻り、柔らかくなっている。オレはこっちのほうがいい。
    「もう厄災ガノンを倒したあとの心配して、ずいぶんと余裕だな」
     始まりの塔でハイラル城に巣食うガノンの姿を見た時、あんなに大きくて、禍々しい化け物を倒すとか無理って思ったなあ。目覚めたばかりで、自分のことさえよくわかっていない時に、されるお願いじゃない気がする。
    「敵わなくて、一回帰ってくるかもしれないのに」
    「あー、そんなこと、あるかも……?」
     その可能性は失念してた。一度、世界を救ってる勇者の言葉だから、説得力がある。トワもそんなこと、あったのかな。もしかしてオレ、すごい思い上がってたかも。
     めちゃくちゃ別れを惜しんで旅立った家に、のこのこと戻ってくるのは恥ずかしいな。トワはわざとらしくどうしたんだ、忘れものかって聞いてきて、オレの羞恥をこれでもかと煽ってきそうだ。普段のお返しとばかりに、言外につついてくる気がする。オレがトワを弄るのはいいんだよ、だって可愛いし。
    「そんなに俺がいなくなるのがいやなら、今度はお前が来いよ」
    「どこに」
    「俺がいる世界に」
    「え〜、だってトワが住んでた村、すごい田舎なんでしょ」
    「ここだってそうだろうが」
     牧場があり、自分達で作物を育て、小さな雑貨屋がある外れの村。トワの話を聞いてると、共通点は多いから言い返せない。このハテノ村も、のんびりした田舎だよなあ。
    「来いとか簡単に言ってくれますね」
    「ブレなら案外、出来るかもしれないじゃないか」
     行けるものなら行ってみたい。来いと言うからには、もちろんオレを傍に置いてくれるよね。そうじゃないと困る。
     こうなったらシーカーストーンの力が暴走したりして、オレをトワの世界に飛ばしてくれないかな。だって厄災ガノンを倒して姫を助け出したら、勇者はもういなくてもよくないか。インパやプルア、ロベリーなど、ゼルダ姫を知る人は他にいるわけだし。
     とても勝手なことだけど、思うだけだから。
    「とりあえず、いまは飯を食おうぜ」
    「うん、お腹すいた」
    「すっかり冷めてるだろうな」
     せっかく温かい食事を用意してくれたのに、引き止めたオレが原因だ。ごめんなさい。せめて温め直せるものはオレがすると伝えて、先に降りていく。
    「……ブレ、ーーな」
    「えっ、なに?」
     階段を駆け降りる音に掻き消され、トワの声はよく聞こえなかった。振り向いて聞き返しても、人の良さそうな笑みを浮かべるだけで教えてくれない。はぐらかされてたまるか。すごく気になるから降りてきたトワに詰め寄るも、するりと避けていく。
     そして軽い足取りで、並べたふたつのグラスにミルクを注いでいる。さっきの、聞こえてたよね。
    「なんて言ったの? もう一回言って」
    「やだ、一度しか言わない」
    「お願いだから、もう一回言ってほしい」
     とても大事なことを聞き逃した気がするから、諦めきれずに食い下がる。
     注ぎ終えたところでトワの表に滑り込み、この腕の中に捕まえてやった。オレが言い出したらしつこいのは、トワもよく知ってるでしょう。言うまで離さないと伝えるように、もっと強く抱きしめる。
    「わかったよ。いつまでも飯が食えないし、言うよ」
     かたん、と瓶が机に置かれる音がしたと思えば、オレの背中に腕が回されていた。今度は逃さないように耳をすます。
    「ありがとな、って言ったんだよ」
    「……どういたしまして?」
     なぜ、トワにありがとうを言われるんだろう。むしろ言うのはオレじゃないか。飯も食わずに、オレのどうしようもないぐだぐだに付き合ってくれたのだから。
    「ブレって俺のこと、ほんとに好きなんだなあ、と思ったから」
     本当は離れたくないくらい好きだし、こんなに想ってないと抱かないよ。それこそ、指で数えきれないほど。受け入れてくれるトワも、そうでしょう。ひとりで楽しそうに笑うから、息が当たってくすぐったい。
    「トワもオレのこと、好きでしょ」
    「そう、っ、んむ」
     改めて言葉にされると少し照れくさい。だから余計なことをいうその唇は、塞ぐことにした。
     オレに合わせてと、トワの頭を思いきり引き寄せる。ほんの僅かでもオレのほうが小さいの、やっぱり悔しい。ミルクは飲んでるし、いまからでも伸びてくれ。
     唇を舐めて食み、開いた隙間から舌を侵入させる。上顎をつついて歯列をなぞれば、待ちきれなくなったトワの舌に誘われる。あとは唾液と一緒にねっとり絡めて、じゅっと吸って、混ぜるだけ。触れ合わせるのは気持ちいいから、いつまでも続けていたくなる。
    「トワ、オレもありがと」
    「、ん?」
     話をして、聞いてもらったからか、心がずいぶん軽くなっている。トワが優しい嘘をつかなくてよかった。気休めはいらないから、それでいいと思う。
     オレひとりで怨念にまみれたでかい化け物倒して、姫を救うんだよ。そのためにめちゃくちゃ頑張った勇者にはさ、少しくらい融通をきかせてくれてもいいのに。女神さまも導師さまも冷たい。
     いつか来るその日に、その時に、オレのことを想っていてくれたらいいな。オレも、忘れないから。


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