カイ「特別な日も好きですが、やっぱり俺はマスターと過ごす、普通の日常みたいな変わらない日々が大好きです」

にっこりと微笑んで、カイトがそう言う。俺は、その純粋無垢な笑顔に、「そうだな」とそっけない返事を返すので精一杯だった。カイトにとって、俺と一緒にいる日々は、ただの日常になってしまったことが、ありありと伝わってきたからだ。
本来、それが普通なんだろうが、カイトは以前、確かに言ってくれたんだ。「マスターといると、毎日が特別な気分になれて、すごく楽しいんです」って。


カイトの記憶データがバグによって消去されてから、どれぐらいだったか。あの時の衝撃からずっと、日付感覚が曖昧だな。休職中だし、余計に。


……ああ、また過去のことを考えてしまった。カイトは今、アイスに夢中になっているから気づいていないだろう。あまりこの顔は見せられたものじゃないだろうから、良かった。
スプーンについていた溶けたアイスが頬についても、それを拭うのはカイト本人だ。キスをする口実のように舐め取りに行くことは、今の俺にはもう許されていない。

恋人同士だった日々が懐かしい。お前が「毎日が特別」と言ってくれた日々が。


こうして、変わりないようで確かに変わってしまった日常を、俺たちは過ごしている。