それは、伸びやかな。
とても綺麗な、セットアップフォームだった──。
卒業式だから部活は休みだと言われていたけれど、なぜだか帰りがたかった俺は、一人体育館に続く渡り廊下を歩いていた。式が終わって、校庭に出てくる先輩たちに花束と色紙を渡して。すでに何度目になるかわからない「ありがとうございました」を贈って。ほとんどの在校生の姿はもうほとんどなくて、先輩たちもとっくに打ち上げのために移動していると思っていたのに、体育館から、ボールを弾ませる音が聞こえてきた。
ガタガタと扉が開いて、俺を見つけたその人は、嬉しそうにニンマリと笑う。
「良いところに来たね、矢巾」
ニンマリと笑ったのは、ボタンというボタンを引きちぎられたすでに制服とは呼べない代物を身につけている及川さんで。
1811