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    layhsk

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    ホットケーキを焼くだけの北治

     失敗した、と眉根を寄せてフライパンを見下ろす信介に、治がその手元を覗き込む。ひっくり返されたホットケーキは、表面が焦茶色になっていた。
     「ぜんぜん大丈夫やん」
     うーん、と信介は唸る。
     「焦げてへんか、これ」
     「こんなもんちゃう?」
     そうかぁ、と呟いたまま、信介は真剣な面持ちでフライパンを見下ろし、残りの半面を焼くことに集中した。
     ホットケーキ作ったことないわ、という信介に、作ろうと言い出したのは治だった。 こないだ、納品ついでに実家に寄った信介は、子供を連れて同じく実家に顔を出した姉に会った。姉は母親にホットケーキミックスを使ったサツマイモの蒸しパンの作り方を聞いて、その日のおやつに作ったのだという。ついでに普通のホットケーキも焼いて、子供らはそちらの方に食いついてしまい、結局蒸しパンは大人三人で食べたらしい。治の方はと言えば、小学生の頃からおやつは専らお握りやチャーハンやラーメンを好み、小腹を満たす軽食と言った方が正しいか。ホットケーキを最後に食べたのは、たぶん小学校に上がる前くらいの頃だろう。もちろん作ったこともなかった。そんな話をして、二人で作ってみようということになった。信介の家にホットケーキミックスなどないので、食材の買い出しがてらスーパーで購入した。袋の裏に書かれた手順を確認して、まずは推奨の分量通りに作ったタネを信介が焼いてみたのだった。
     「難しいでこれ、加減がわからん」
     差し込んだフライ返しで焼き具合を確認しながら、信介が眉根に小さく皺を刻んでいる。目の前のことに集中した時の信介の、多分本人は気付いていない癖に、治はひそかに笑む。
     「これ、焼けたかどうか、どう判断したらええの」
     信介の言葉に、治は竹串を差し出した。
     「刺して、串になんも付かんかったら大丈夫やないん」
     竹串を手にした信介は、もう一度フライ返しでホットケーキを少し持ち上げてから、何事か確認して突き刺した。ぷすり、と乾いた音がする。
     「焼けたか」
     「焼けたな」
     二人して、歪な円形の、焦茶色のホットケーキを見下ろす。フライパンを傾けると、かさりと乾いた音をたてて皿に滑り落ちた。
     「次、俺が焼く」
     治はそう言ってコンロの前に立った。
     「店長のお手並み拝見やわ」
     「ちょ、あんま見んで、緊張するやん」
     「ご謙遜を」
     真横に陣取って、じっと治の手元を見詰める信介に、邪魔やわぁ、とぶつくさ言いながら治はフライパンにバターを落とす。お玉で掬った粘り気のあるタネをフライパンに落とすと、バターがじくじく泡立った。

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    layhsk

    DONEホットケーキを焼くだけの北治
     失敗した、と眉根を寄せてフライパンを見下ろす信介に、治がその手元を覗き込む。ひっくり返されたホットケーキは、表面が焦茶色になっていた。
     「ぜんぜん大丈夫やん」
     うーん、と信介は唸る。
     「焦げてへんか、これ」
     「こんなもんちゃう?」
     そうかぁ、と呟いたまま、信介は真剣な面持ちでフライパンを見下ろし、残りの半面を焼くことに集中した。
     ホットケーキ作ったことないわ、という信介に、作ろうと言い出したのは治だった。 こないだ、納品ついでに実家に寄った信介は、子供を連れて同じく実家に顔を出した姉に会った。姉は母親にホットケーキミックスを使ったサツマイモの蒸しパンの作り方を聞いて、その日のおやつに作ったのだという。ついでに普通のホットケーキも焼いて、子供らはそちらの方に食いついてしまい、結局蒸しパンは大人三人で食べたらしい。治の方はと言えば、小学生の頃からおやつは専らお握りやチャーハンやラーメンを好み、小腹を満たす軽食と言った方が正しいか。ホットケーキを最後に食べたのは、たぶん小学校に上がる前くらいの頃だろう。もちろん作ったこともなかった。そんな話をして、二人で作ってみようということになった。信介の家にホットケーキミックスなどないので、食材の買い出しがてらスーパーで購入した。袋の裏に書かれた手順を確認して、まずは推奨の分量通りに作ったタネを信介が焼いてみたのだった。
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    sheep_lumei

    DOODLEサンポと星ちゃんが色々あって二人で買い物に行く羽目になる話 宇宙ステーションヘルタの「不思議なコーヒー」の話が少し含まれます
    作業スペースで書いた落書きなので誤字脱字とか普段より多いかも あとコーヒーがベロブルグにあるかは忘れたけど無かった気もする あるっけ ないか まあ知らん……
    コーヒーと服と間接キス「あ」
    「え」

    ベロブルグの街角で、星はブラックコーヒー片手に呑気に歩いていた。前に年上の綺麗なお姉さんたちがコーヒー片手に街を歩いていたのが格好良くて真似してみたかったのだが、星は開始十秒でその行動を後悔する羽目になる。

    ベンチでブラックコーヒーを堪能するために角を曲がろうとした瞬間、勢いよく角の向こうから出て来た人影とそれはもう漫画やドラマで見るくらいの綺麗な正面衝突をした。違う。綺麗な、というより悲惨な、が正しい。考えて見てほしい、星の手には淹れたてほやほやのコーヒーが入っていたのだ。

    「っ!? ちょ、あっつ、熱いんですけどぉ!?」
    「ご、ごめん……?」
    「疑問形にならないでもらえます!?」

    勢いよく曲がって来た相手ことサンポの服に、星のブラックコーヒーは大きな染みを作ってしまったのである。幸いにも何かの帰りだったのか普段の訳が分からない構造の服ではなくラフな格好をしていたサンポだが、上着に出来た染みはおしゃれとかアートとか、その辺りの言葉で隠せそうにはないほど酷いものになっていた。
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