シャンウタ転生パロ 第七話 実花※転生if
※ゴードンとウタの苗字を捏造しました。ミューズ(音楽神)の複数形です。色々考えたり作ったりした上でシンプルで率直なのが一番かなという結論に至りました。
※作中契約書等が出てくるのですが、本物のように堅苦しくなく、簡単な言葉を使っています。テンプレートなどを、参考にするため調べましたが、似せて改変すると、著作権ひっかかりそうなのでなるべく自分の言葉で考えたつもりです。それでも過度に何か似たものがあるようでしたらお知らせください。消します。
※閲覧は自己責任でお願いします。
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カチッ
【疑念】エレ芸の復興スピードが早すぎる?賄賂か募金か
12/×(金)17:18 配信
先月、11月×日、エレジア芸術大学において火災が発生した。学園祭四日目のことだった。
調査によると、中央ステージ付近の屋台が火元だという。あたりに燃え広がり、広場の芝生だけでなく、音楽学部の校舎も火事となった。
現時点での死者は××人。負傷者は×××人とされている。その他消失した史料は数万点に及ぶ。
史料のなかには重要文化財なども含まれていたようで、被害総額は経営を傾かせるのに十分な額だった。
しかし、エレジア芸術大学は復興した。卒業生や財界からの支援の結果である。
だが、はたして、本当に寄付によるものなのだろうか。
当社独自の調査によると、ある貿易会社から多額の支援がなされているようである。その会社は前々から大学のスポンサーではあったが、同時に、よからぬ噂も存在する。
とある大学理事と癒着しているというものだ。だから寄付金が多い、というのであればそこまで珍しい話ではないかもしれないが、額が額であるために、バランスがあわない。
そしてその歪みやズレには何か存在し、明らかにすべきである、というのが当社の理念であるため、引き続き当該理事と貿易会社との関係を探っていく所存である。
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エレ芸理事と貿易会社の交渉 復金の見返りは
12/▲(水)7:55 配信
先日、独自の情報網でエレジア芸術大学のとある理事とさる貿易会社とが癒着しているという情報を入手した。
しかし、理事が、そしてエレ芸が巨大すぎる恩恵を受ける見返りが判明していなかった。そこで調査を重ねていると、秘密裏に交渉がなされていたとわかった。
交渉のテーブルに載せられたのは、復興の資金、そして、一人の人物であるらしい。それが一体誰なのかは掴めなかったが、資金に見合うだけの儲けを出せる、著名人だということには疑いがないだろう。
多方面からの圧力により、我々はここまでの調査で膝を屈さねばならないが、時が経てば謎も解き明かされるはずである。
部屋には、パタリパタリと雨打つ音だけが響いていた。ブルーライトがウタの顔を青白く照らす。
何これ、どういうこと?
何となく学園祭でのことが気になってしまい、エゴサーチをしていると、偶然12年前の記事が出てきた。
ペローナの言葉のおかげで立ち直れてはいたが、先日不審者に言われた言葉は依然として頭を擡げていた。学園祭のファッションショーの後は、尚更。だからつい、記事を開いてしまったのだが──
この、理事って、養父のことだよね?それに、貿易会社なんて、シャンクス以外にいないでしょ。確かに何であの二人が親しげなのか謎だったけど、こういう関係だったの? いや、あの人たちに限って賄賂なんてことはないだろうから、記事で言うほどの怪しい関係ではないと思うけど、妙にひっかかる。
ただ、少なくとも、たぶん、ウタが火災の原因だから、どこかと取引して復興に力をいれるほどゴードンが責任を感じていたことは、わかる。
はぁ、とため息をつきつつ、タブを閉じる。これは直接聞いた方が早い気がするな。あれから12年、そろそろ目を逸らすのをやめるべきだろう。今はズルズルと活動休止になってしまっているけれど、今後のことを考えると、負の遺産は清算しておかなければ。
一歩廊下へ踏み出した途端、ぶるりと肩が震えた。冷えた廊下で肩をさすりながら、早歩きでゴードンの部屋へ向かう。
「お養父さまー? 今いいですかー」
部屋から漏れ出る電気の灯りがないが、念のためノックした。
そういえば、大学で仕事をしているんだっけか、今日は。どうしたものか、という少しの逡巡の後、ま、いいか、とウタはゴードンの部屋に押し入った。
「えーと、たしか」
この戸棚の奥に仕掛けがあって、ここに物置いて棚ずらすと……あ、開いた。ふふん、いつだったか子どもの頃にゴードンがこっそり何か収納していたのを知ったんだよね。重要書類とかはここにあるはずだから、下の方に12年前の何かがあるはず。
「あ! あった」
12年前の日付が書かれた茶封筒が出てきた。これだけ紐付き封筒に仕舞い込まれているとは、ますます怪しい。
玉紐をほどき、紙を取り出す。高級紙が三枚入っていた。昔はこういうものを見つけたとて、難しい言葉ばかりで、いつのまにか隠し戸棚探しはやめていたけれど、大人になった今なら、何が書かれているかわかるだろう。
「えーと、なになに?『金銭貸借契約書』……お、これかな」
いやでも寄付金だったはず。これではないのだろうか。
一旦棚の端に置いて、またがさごそと隠し戸棚を漁るも、12年前のものはこれだけだった。しかたなく、もう一度、今度は覗くだけでなく、全て取り出し、目を通す。
「え……なに、これ」
文字を追うごとに、ウタの顔は青ざめ、手は震えていった。一枚目でもう投げ出したくなったが、自分に関わることだからと、なんとか最後まで読み切った。しかし、終わる頃には、へたり込んでしまっていた。
金銭貸借契約書
貸主ゴール・D・ロジャー (以下、「甲」という)は、借主ミューゼス・ゴードン(以下、「乙」という)は下記のとおり金銭貸借契約を締結した。
第1条(金銭貸借契約)
甲は、乙に対し、××××年×月×日、金××億Bを貸し渡し、乙はこれを借り受けた。
第2条(返済方法)
甲及び乙は、返済方法を以下のとおりと定める。
一、返済開始期日
乙の義子・ウタ(以下、「丙」という。)が大学卒業後半年を経てから支払いを開始する。
二、支払方法
甲の運営する会社の企画に歌手が出演するものがある場合、丙は最優先で出演するという方法により支払う。なお、丙が歌手や演奏家などの芸能関係の職に就かなかった場合、甲は乙の教え子の優先出演権を得るものとする。
第3条(連帯保証)
フィガーランド・シャンクス(以下、「丁」という。)は、本契約により生じる乙の甲に対する全ての債務を保証し、乙と連帯して責任を負うことを約束する。なお、保証の証として丁は丙と婚約をする。
婚約誓約書
フィガーランド・シャンクス(以下「甲」)とミューゼス・ウタ(以下「乙」)は、以下のとおり婚約誓約書を締結する。
第一条(期限)
婚約期限は××××年×月×日から××〇〇年○月○日までとする。その間乙が破棄を宣言しなければ、××〇〇年○月△日に婚姻が成立する。
第二条(仕事)
乙の職は両家親族を交えた協議の上最終決定するものとする。
第三条(破棄)
乙は婚約開始後十年から××〇〇年○月△日までの間に婚約破棄を宣言可能である。なお、自筆で捺印のある書面でなければ有効としない。
第四条(その他)
甲の後見人はゴール・D・ロジャー、乙の後見人はミューゼス・ゴードンであり、誓約書を管理・保管する。
甲 フィガーランド・シャンクス 印
乙 ミューゼス・ウタ 印
「おや、ウタ、いたのかい。楽譜はその棚ではな……」
「おかえり……これ、なに」
ぐるぐると頭の中を彷徨っていたウタの意識はゴードンが部屋の電気をつけたことにより、パチリと起き上がった。
「……あ、ただいま、あぁ、それは、その」
ゴードンは手荷物を小脇に抱えたままソファに腰掛けると、ローテーブルに広げられた書類におろおろと視線を向ける。
「はっきり言ってよ。私はシャンクスの婚約者で、寄付金の人質?」
「いや……」
「隠さないでよ、これ以上。ちゃんと説明して。じゃないと、私、私は所詮養子で、家の道具だったってことになっちゃうよっ!」
バンッと机を叩く音にハッと顔を上げると、ウタは涙目になっていた。
「違う、君は大切な私の子だ。それに、君のことをそんなふうに扱いたかったわけではない、が……すまない」
事実は見返りも何もなしに多額の寄付金をよこそうとするシャンクスに受け取り渋っていたら、ロジャーから折衷案として出されたのが二人の婚約だったわけだが、客観的に見ればウタを利用して金を受け取っていることに他ならないだろう。ウタの言葉を借りれば、家の道具として交渉のテーブルに乗せたことになる。
「……っ!わかった」
「ウタ……」
「いいよ、もう、この話は事実なのでしょう、だったら、今更どうこう言っても仕方ない。だから、これからの話をしようよ」
涙を拭ったウタは敢然とゴードンを見据える。そして婚約誓約書の第三条を指差した。
「破棄……できるんでしょ」
「あぁ」
「なら、破棄します。ついでに、シャンクスの船の歌姫になる仮契約のやつも。それから、歌手の活動もこのまましばらく休止します」
「えっ?!」
思わず立ち上がるゴードン。この書類をウタが見つけた時点で破棄を提示するのは覚悟の上だったが、このタイミングで音楽活動も休止となるとは思っていなかった。
「急にごめん。でも、ちょっと、一人で考える時間が欲しい。こんな気持ちのまま活動を続けても私自身楽しめないから」
ウタが心底悔しそうに唇を噛み締めるものだから、ゴードンはさすがに二の句が告げなかった。学園祭も終わり、活動を再開しても問題がない時期に差し掛かっていただけあって、残念な気もするが、引き止められるほどの力は今のゴードンの言葉にはない。
「了解した。では彼へは私から連絡しよう」
「ううん。大丈夫、自分でできる」
「そうか」
「うん、それじゃあ、この紙借りるね」
スッと立ち上がったウタは、静かに部屋を出ていった。僅かに鳴った扉の音が、やけに響いて聞こえた気がした。
◇
自室で広げた便箋を前に、ウタはペンを動かせずにいた。
シャンクスが卒業まであと一年という、このタイミングで接触してきたってことは、ゴードンがウタとシャンクスの結婚を本格的に進めようとしているということでもあるだろう。
──ウタの意思は? ああそうだ、なんで今まで気づかなかったんだろう、自分で決めたことなんてあったっけ。
ずっと流されてばかりだった。ゴードンが歌の才能があるからと小さい頃から歌を教えてきて、ウタ自身歌うことはすごく好きだったし、ゴードンたちが喜んでくれたのが嬉しかった。でも、きっかけは全部与えられてきたこと。
一度、歌から離れてみようかな。自分の意思で自分の人生を決めてみたい。まぁ、結局歌に戻ってくるだろうけど、人生の分岐点だし、小休止を挟んでもいいよね。自分の人生のことは、自分で決めなければ。
──そういうことを、手紙に書こう。
ゴードンやシャンクスだけじゃなく、もっと多くの人に、ファンに迷惑をかけてしまうかもしれないけれど、これは終わりじゃない、始まりのための助走期間だ。