千至にょた百合 2「また大量に買ってきて…」
「いいだろ、私のお金、お前へのプレゼントなんだから」
「そうですけど…」
こないだお互いに下着の交換をして以来、私を着飾ることにハマった先輩は、よく両手に紙袋を下げて帰ってくることが増えた。私自身、確かに先輩が私の選んだものを身に着けてくれたのを見て興奮してしまった自覚もあるので今の先輩の行動もまぁ何となく気持ちは分かる。だけど、限度があるでしょう!!
「三日に一回くらいの頻度でこの大量の紙袋、見てる気がするんですけど」
「可愛い服を見かけたらね、どうしても茅ヶ崎の姿が頭によぎってさ」
「ぐぬぬ…デレないでください…何も言えなくなるんで」
顔に熱を溜めながら悔しがる私を見て楽しそうに笑う先輩に笑い事じゃないんですよと頬を膨らませながら怒る。それを見てまたはいはいと頭を撫でて着替えていた手を進めた。
着替えを終えた先輩は、ソファに座りながら机の上に並べられた紙袋たちを指差した。
「で?着て見せてくれないの?」
「今からですか?」
「逆にいつ?」
ニッコリとほほ笑む先輩の圧に負けて机の上に置かれた紙袋たちを引っ掴んで部屋を出た。部屋で目の前で着替えるよりジャーンと着替えた状態で扉から登場する方がいいだろうと思ってここ何回かは脱衣所で着替えを行うようにしている。最初こそ先輩も最初に私が見たいんだけどなどと可愛いことを言っていたが、まぁそこそこに遅い時間にコレが始まるので皆部屋にいるから大丈夫ということになった。
誰もいない脱衣所でもらった紙袋を開く。うわぁ先輩、これ一着うん万円するってみたことあるブランドですが…。うわっこっちも。いつものことだけどブランド物ばかりで袋から出す手が震えそうになる。今回先輩がチョイスした服は肩の部分が少しだけ空いていて袖がふんわりとボリュームを持った、腰回りがキュッと絞られている形のワンピースだった。スタイルのよく見えるデザインだ。流石先輩。他に靴やアクセサリーの入った袋もあったが今回は服だけでいいだろうと早速着替えようとしたら、まだ一つ開けていない袋があることに気がついた。これもアクセサリーかなにかだろうかと袋を開ける。
「あ~やられた…先輩め……」
袋の中を確認して恨み言が零れ落ちた。
コンコンコン。
「入りますよ~」
ゆっくり自室の扉を開けるとソファに座ってこちらを振り向く先輩と目が合った。こちらを見た先輩はニッコリと嬉しそうに笑っている。
「うん、やっぱりそのワンピース似合ってるね。流石茅ヶ崎」
「いえいえ、先輩のお見立てがいいんですよ」
職場でするような貼り付けた笑顔のまま先輩の横に腰を下ろす。この先輩はどうせこのワンピースを建前にあの紙袋の物を着せたかっただけに違いない。一応、例のものも身に着けているが先輩が言ってこない限り知らぬ存ぜぬでいかせてもらうからな。
「どうです?写真でも撮っておきます??」
にこりと笑って立ち上がって先輩の前でくるりと一周してあげた。
「いや、いいよ。その代わりその服沢山着て見せて」
「そりゃあ勿論。いただいた物は沢山着させてもらいますよ」
とりあえず今回は写真撮らないなら汚す前に着替えますねと首の後ろのボタンを外そうとした手を止められた。
「なんですか」
「アクセサリーや靴を身に着けてないのは見たら分かるけど、アレは?アレは見せてくれないの?」
甘えるように下から顔を覗かせてきた。何その顔、可愛すぎる。
「なんのことですかね?」
「はぁ残念だよ茅ヶ崎」
残念ってなんだ、おい先輩。そしてため息。
「アレ着てる茅ヶ崎が見られたらお礼に何でもしてあげようと思ったのに…」
は?今、この人なんて言った?何でもしてあげる?え、ということはまた千景さんにふわふわで可愛い服や下着を着てもらったり着てもらったり着てもらったりしてもらえるってことでオケ?
仕方ないなと言って立ち上がる先輩の腕を今度は私が思い切り掴む。
「なに?」
こちらを見た先輩を確認して無言で先ほど同様にワンピースのボタンに手を掛けて外し、上の下着が見えるギリギリのところまで服を下げた。えっちなことをする以外でこんなにまじまじと下着姿を見られることへの恥ずかしさが凄まじい。先輩の方へ視線を移せなくて左下の床を見るしかできない。
「着てくれたんだ」
「紙袋の中から着ろって主張が凄かったんです。っんァ、ちょ…ッ」
先輩の方を見れていなかった私の顔を上げさせてゆっくりと優しく口を塞がれた。いきなりすぎる。口の中の弱いところを刺激されて一瞬で思考がぐちゃぐちゃになっていく。本当に先輩のキスに弱いんだよな。悔しい。
「…似合ってる。可愛いよ茅ヶ崎」
「やァッもう恥ずかしすぎる」
口が解放され額にキスを一つ落とされた。行動がイケメンなんですが…。
「脱がせてもいい?」
「うぅ…絶対今度言うこと聞いてくださいよ!!」
ゆっくりと残りのワンピースを脱がせていく先輩に恥ずかしさとキスで涙目になった怖さも何もない顔で怒る。案の定何も怖さがなかったようで笑われた。
スルスルと脱がされていき最終的に先輩が用意した下着を身に着けた私が現れたってわけ。前回の下着とは真逆に今度はこんなフリフリ可愛い全開の下着が用意されているなんて思いもしなかったです。はい。
「前回のも似合ってたけど、今回のもやっぱり似合ってる。…あと、こここんな感じなんだな」
先輩の指す『ここ』とはショーツの後ろについているリボンのことだろう。あっちょっと触らないでくださいよ!このリボンを解いたら完全にお尻が丸見えになるんですから!!
私の抵抗も虚しくその後簡単に解かれたリボンとニッコリと笑う先輩に抗いきれず流されたしまった。
「一人で恥ずかしいので早く千景さんも脱いで…!」