木箱の珊瑚木箱の珊瑚
わたしが地元の少々特殊な墓地で案内のボランティアを始めたのは、元々そこで案内ボランティアをしていた祖母が昨年に腰を痛めたことがきっかけだった。その頃のわたしは大学生になって二度目の夏休みで、アルバイトしかやることがなく、暇つぶし感覚で祖母の代打を勤めた。一度きりの代打だったはずがどうしたことか、一年たった今でもなんとなくボランティアを続けていた。
墓地といっても寺に隣接した単なる墓地ではない。
その昔、この国に軍隊が存在していた時代に用意された軍人専用の軍用墓地だ。これがなぜか公園に隣接していて、しかも誰でも自由に入れるようになっているせいで、小さい頃のわたしは何の疑問も持たずに友だちとこの墓場で鬼ごっこに興じていた。成長して墓地が何のためにあるのかを知ると近寄らなくなったが、そんな場所でボランティアをすることになるとは奇妙な縁もあるものだ。
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