ライラ「深幸」
「なに?」
「今日は少し酔いたい気分なんだ」
なんて、呼び出されたのが2時間前。
今となっては当の本人は俺の隣に座り、レンズの向こう側の瞼をうつらうつらと重力に逆らわせている。
店を出てタクシーに乗り込むまでの距離すら覚束無い足取りで危なっかしく、やっとの思いで乗り込ませたのがほんの10分前だったと思う。
「ちょっと、さすがに飲み過ぎじゃない?」
と問えば
「大丈夫だ、今日はお前がいるからな」
なんて言うもんだから、全くどの口がだよ、と溜め息と共に吐き捨てた。
皮肉に反して、それでも内心ちょっと妙に嬉しく思う自分もいて、上手いように転がされているようで余計に腹が立った。
こいつに頼られるとむず痒くて仕方ないからやめてほしいんだよな。
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