さよならセーマン 前編 セーマンは俺の幼馴染だ。親友だ。先日、恋愛相談をしたら俺の好きなエマちゃんがクラスのイケメン、シヌーンと付き合っていることが判明し急転直下の失恋に打ちのめされたかと思ったのも束の間、何故かセーマンにブッチュとキッスされ、しかも続きを試させろと求められている。どうしてこうなったんだ。一日で起きていい情報量ではない。
「で、返事はまだか?」
しれっと真っ昼間の休憩中の教室でそんなことを言ってくるのがセーマンだ。せめて声を顰めて欲しい。
「しーっ教室で聞くな馬鹿……おま、本当そういうとこだぞ?」
「ふむ、何か問題だったか?では帰りに今一度問うとしよう、それまでに答えを出しておけ。流石に待ちくたびれたぞ」
あれから一週間経っていた。先延ばししておけば、いずれ興味を失って諦めてくれるかと一縷の望みを託していたのだが無駄だったようだ。返事をしなければいけない。しかし困った。俺は別に男が好きなわけではない、エマちゃんへみたいな普通に可愛い胸の大きい女子が好きだ。いや、好きだった。セーマンは確かに綺麗な顔はしているが、同性だしそれより何より友達とそういう関係性になるつもりはない。気を抜くとずっとあの日の事を反芻して何とも言えない妙な気分になってしまってはいるけれど、それはそれ、これはこれだ。
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