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    ダイワタは左右固定
    時々ダンキバ、レグリなど
    あとはだいぶ雑食
    ※BL用に運用を変更しました

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    HGSS時空 主人公はヒビキくん

    #ダイワタ

    ダイワタ看病話 駆けつけた国際警察や地域の巡査たちに連れられていくロケット団の残党を、見守る影が三つあった。一人はセキエイリーグのチャンピオン、ワタル。一人はそのチャンピオンを最近打ち倒し、新チャンピオンの座を手にした少年、ヒビキ。さらにもう一人、ホウエンという南方の地方でかつてチャンピオンを務めていた男、ダイゴ。
     ロケット団は解散宣言から三年は経ち、組織として存在しないことにはなっているが、いまだ残党は特徴的な制服に身を包み、悪事を働くのをやめることはない。この世界において、悪党への警察の抑止力は非常に弱い。何故ならすべての活動にポケモンが関わり、ポケモン勝負に勝ちさえすれば大抵の悪事は通ってしまうからだ。となると、トレーナーの頂点に君臨するチャンピオンは、警察では止められない者を止められると期待される事も多く、時折開かれるリーグ内会議では、チャンピオンと名乗る以上はこういった時事ニュースには常に目を光らせるように、と勧告されていた。
     特にワタルは持ち前の正義感と出自の由緒正しさから、チャンピオンの中でもとりわけ積極的に悪と戦っていた。ヒビキが初めてワタルと会ったのもロケット団絡みの用事であったし、ダイゴがホウエンに滞在していても、ロケット団のニュースの脇にワタルが映っている事を確認できるほどだった。
     一通り連行が完了した事を三人が見届けると、ヒビキが口を開いた。
    「『こうてつ』が異変に真っ先に気づいて、追いかけたらあの制服が目に入って……ワタルさんに連絡を入れたんです。はがねタイプが標的だって、頭が良いから分かったんでしょうね」
    「さすがはヒビキくんだ。はがねタイプのポケモンたちと、……ボクの『こうてつ』を守ってくれてありがとう。ああ、今はもちろんきみのだよ」
    「分かってますって」
     得意気にするヒビキ。まだ年端も行かないほど幼いが、子どもである事が幸いするのか、敵の加害から免れる運の強さもあるようだ。今回すぐにワタルを呼んだのもあり、怪我一つ負っていないその姿は、少年を巻き込んだ立場のダイゴやワタルにとっては(第一発見者はヒビキではあるとはいえ)希望と安堵の対象であった。
    「ぼく、このままポケセンに寄って、もともとの用事を済ませようと思うんですけど、もうぼくらの仕事って無いですよね?」
    「ああ、お疲れさま。もし仮に警察に何か聞かれても、おれが答えておくから大丈夫だよ」
    「ありがとうございます……、あ」
     ワタルはマントの下で腕を組み、ビルの壁にもたれかかっている。なんてことのない仕草だったが、ヒビキは振り返りざまに、ワタルを不安そうに見上げた。
    「さっきロケット団のドガースがかなり広い範囲でスモッグを使ってましだけど……大丈夫でしたか?」
     側で会話を見守っていたダイゴはヒビキの言葉に反応し、目を見開く。
    「マントですぐ鼻を覆ったからね。大したことはないし、後で人間用の解毒剤を飲んでおくよ。ヒビキくんこそ、おれの解毒剤を分けておこうか?」
    「センターでもらえるので大丈夫です、ワタルさんこそ気をつけて! じゃあぼく行きますね」
    「また会おうね」
    「ダイゴさんも、お元気で」
     気持ちの良い少年だ。ヒビキはお辞儀をし、ポケモンセンターを目指して相棒のバクフーンとともに駆け出していく。その背中をダイゴとワタルは街並みに消えるまで見守ったが、ヒビキが見えなくなった瞬間、穏やかに微笑んでいたダイゴの顔から笑顔が消えた。
    「……スモッグ、だって?」
     普段の好青年っぷりからは想像のつかない低い声がビルの路地裏を反射する。ダイゴはここ、ヤマブキシティには仕事の合間で訪れていただけで、ヒビキとワタルの一部始終を見ていたわけではなかった。もちろん、事を把握してからは自分も加勢したのであったが。
    「ワタル、解毒剤は?」
     ワタルからの返事が無い。少し威圧的に問い詰めてしまったかと反省し、彼の方に向き直る。その瞬間、ワタルがマントごと自分に倒れ込んでくる事にもはや驚きはなかった。身体を咄嗟に支え、自分が一緒になって転ばないように足を踏ん張った。
     ……支えた身体が熱い。事情聴取中もヒビキとの会話中も、ワタルは至って普通を装っていたが、その間ずっとポケモンの毒が回っていたのだ。どこかで会話を打ち切って手当てをすればここまでにはならなかったのに、とダイゴは心の中で舌打ちする。普通の男ならおそらくポケモンの技に巻き込まれた時点でへたり込んでしまうのだが、ワタルは耐えられるのだ。彼をチャンピオンの座まで導いた精神力と体力は生半可なものではない。だが、こういった無理をするために日々修行しているわけではないだろうと、ダイゴの頭に血が昇る。
    「何故もっと早く言わなかったんだ!」
    「……はは、大丈夫だと、思って、な……」
     先ほどまでヒビキを相手に朗らかに笑っていたとは思えないほど、弱り切って掠れた声をしている。一刻を争うと、ダイゴはワタルの懐から話題にも上がっていた解毒剤を取り出し、封を切ってワタルの顎を掴む。水が無くても飲めるタイプの解毒剤だったので、半ば強引に彼の口の中に流し込んだが、毒による麻痺なのか、ワタルの口が半開きのまま閉じ切らないのを見ると、薬が零れて薬効が弱まる事を恐れ、彼の唇を自分の物で塞いだ。
     しばらくし、ワタルの喉仏が動いた事を確認すると、ダイゴは唇を離した。この症状の重さで息を止めるような真似をしてしまった事に少し後悔するが、急がないとという焦りが冷静な判断を難しくさせた。
    「……大丈夫かい、水、あるよ」
    「ああ……」
     まだ身体は熱いものの、ワタルの浅い呼吸が少しずつ深く落ち着いていくのを耳元で聞いて、ダイゴは少し安心した。もちろんこのままにはしておけないのでヒビキのようにポケモンセンターか、人間用の病院か、どちらかに向かわなくてはならないのだが。ワタルはダイゴから受け取った容器から水を飲み、それでも辛いと縋るように、ダイゴの肩に顔を埋める。
     ビルの路地裏の人通りが少ないのを改めて確認すると、ダイゴはワタルの肩を抱いたまま、その場に立膝で座り込んで、片方の膝の上にワタルの頭を乗せた。元とはいえリーグチャンピオンが二人、路地裏で膝枕とは、パパラッチも見た事ないだろうなと自嘲するが、その皮肉めいた笑顔を見る者はここには誰もいない。
    「……せめてヒビキくんの前では、もっと辛い事を打ち明けたって良いじゃないか。彼は立派なトレーナーだよ」
    「……目の前で大人が倒れたら、驚かせてしまう……」
    「……ボクは驚かないとでも?」
     心配していると素直に言いきれなくて、つい憎まれ口を叩いてしまう。症状が急変したのかもしれないが、先ほどまではダイゴが気づかないほどにはワタルは完璧に毒を耐え切っていた。それがこうなるのだから、自分の心は多少なりとも波を打って当然だ。子どもに心配をかけないためだけに、そこまで気丈に振る舞えるのなら、何故。
     ……その瞬間、ダイゴの頭にとある思考がよぎるが、ワタルの額に浮かぶ汗を見て、すぐに打ち消した。今はそんなことを考えている場合じゃない。
     ハンカチを取り出し、汗を拭う。青年らしい硬さを伴った、整った顔だな、と余計な事を考えていると、ワタルがふ、と笑ってみせたので、ダイゴの心はまた波打つ事になる。
    「そうか、きみは……おれが倒れると驚くのか。ここまで、手厚く介抱してくれるのに」
     何を言っているんだ。もし他人同士でもこのような事が起こったら最低限の世話はするし、自分とワタルは同世代のチャンピオン同士で友人なのだから、これくらいして当然だろう。自分はそれほど冷徹、もしくは他人に興味が無いように見えるのだろうか。興味が無いのであれば、それはワタルの方だ。ちっともボクの気持ちを分かっていない。誰がギリギリまで毒に耐えて欲しいなんて思うんだ。
     汗を一通り拭い終わると、ささくれだった心の苛立ちをしまったままに、残った思いやりの気持ちだけを持って、ワタルの少し硬い髪を撫でる。自慢のオールバックが乱れないように、優しく。
    「ああすまない、さっき、必死で分からなくて、唇を……」
    「大丈夫だ」
     言葉がはっきりしてきた。ワタルの体調が戻ってきていることに安心するが、どうも自分の心の調子が元に戻らない。
    「大丈夫だ、嬉しかった」
    「……え」
     どういう意味で。必死の介抱がなのか、不意のキスがなのか、聞く余裕すらない。だから、先ほどから浮かんでいた疑問を代わりにぶつける事にした。そうしないと、なけなしの良心に隠れた醜い独占欲が、暴発してしまいそうだったから。
    「ワタルさ、ボクの前では弱味を見せても良いって……思ってる?」
     熱に浮かされて伏せっていたワタルの目が、急に開かれる。訊くのは早計だったかもしれないと、ダイゴは言葉を足した。
    「違う、別に責めてるわけじゃないよ。ただ、ボクと二人きりになってから、きみが急に弱った気がして……気になったんだ」
     ワタルは、バツが悪そうに辺りを見回すと、まだ重いであろう上半身を起こしたかと思えば、ダイゴの耳元に唇を近づける。ひどくゆっくりした動きに固まったように待ち続けたダイゴへ、ワタルは囁くように答えた。
    「……おれはきみに、甘えているかもしれない」
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