マフィアパロひと目見たとき、美しい人だと思った。きっと他の人に言ってもわかってもらえない。
血濡れで笑う彼のことがどうしようもなく綺麗で…
《欲しい》
そう思った。この仕事に就いてから欲しい、手に入れたいなんて感情は抱いたことがなかったのに。彼を手に入れたいと思った。
その彼がどれだけ人を殺めていても。
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(……おれがほしい……?)
《ア……》
同僚との飲み会の席で、言ってしまった。微妙な顔をして笑う彼、涼架さんは僕の先輩マフィアで、トップレベルの戦力だ。
そんな彼にお酒の勢いとはいえ、告白紛いのことをしてしまった。思わず謝る
(それどういう意味ー?おれの戦闘力がほしいってこと(笑)なんちゃってー冗談だよね!)
わざとらしく笑う涼架さん。
天然で抜けてるとこさえ彼の技、はぐらかされている。
《…やっぱ勝てないなぁ…》
戦闘においてもそう思う。
圧倒的な力の差…ぼくには到底手に入れられない高嶺の花。
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《え……?》
目を疑った。敵対してる組織の若井と涼架さんが仲良く手を繋いでいた。
僕の告白やアピールはあんなに気づいてくれなかったのに…はぐらかしてたのに…まさか組織に取られるなんて。不服だ。ドロドロとした感情 が湧き上がってきた。僕だってマフィアだ、トップレベルではないものの、最近は涼架さんと手合わせできるくらい成長してる。
ぐるぐると考えてた頭が、とっさに足を動かしていた。
コンクリートが割れるほどの踏み込みをし、瞬きのする間に二人に近づく。
(……っ…?!)
涼架さんが焦りの表情を見せた。だが攻撃はかわした。流石だった。
勢いよく首に手刀を入れる。
だかまたかわされる。横目で若井を確認すると、僕の背後からナイフを突き立てようとしてるところだった。
《流石に二人は無理だったか…》
ぼんやりとそんなことを考えた。次に背中に来る衝撃を想像したが、いつまで立っても来ない。
後ろを確認すると、若井に刺されている涼架さんがめに入った。
《なんで……??》
あれだけはぐらかしていたのに。若井は恋人のはずなのに…若井のナイフが涼架さんの腹から抜かれる。
ビタビタと血が落ちて、涼架さんが倒れ込んだ。
(……やっぱ…いたい…ね…
弱々しく僕に笑いかける。なんで僕なんて…僕なんて好きじゃなにのに…
《なんで…若井は…恋人じゃ…
(あー…はは…wちがうよ…あれね…逃げられないように手…握られてたんだ…いつ反撃しようか見てたの…
喋るたびに口から血が溢れてる
《…そんな…僕が…僕が割り込まなければ…
(…確かにね…
《……そ…そんな…やだ…涼架さん…
(ねぇ…おれのこと…ほしいって言ってたよね…
あのときはぐらかしたくせに…ずるい人だ。
(…いいよ…あげる…殺してよ…おれのこと…
《え……?
(痛いんだよね…このまんまだと…だから…殺して…
《……涼架さんずっと好きでした…だから…
(気づいてたよ。僕も好きだったよ…
冗談っぽく笑う。綺麗だ。
《………俺も好きです。
(……っ…ふふ…来世でまた会おう
僕は最愛の人にナイフを突き刺した。