シュレ猫、デザート。「姉君はアーサーの本当の能力を知っているので、さすがに病気で臥せっているという言葉では納得してもらえず」
救護棟の個室で騎士団長の小脇に抱えられているアーサーを見る。ピンと立った尻尾はゆらゆらと左右に揺れ、俺の顔を見て、騎士団長の顔を見て、また俺を見た。
「今、この状態のアーサーを、ですか?」
「はい。今は人払いをして、室内にはカラム隊長とハリソン副隊長だけです。あの二人がいれば万が一という事もないでしょう」
騎士団長が顔を顰める気持ちはよく分かる。人間としての自覚が残っているか怪しい息子を、この国の第一王女に面会させろというのだから。
「実は大怪我をしたのに、騎士団総出で隠されているのではないかと……それはもう大層落ち込んでいるもので」
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