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    あげぱん

    @pan_de_desayuno

    赤安 沖安 ライバボ 秀零
    生きる糧🏋️

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    あげぱん

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    ゼロティの鯖缶回、あかい、いたもん!
    ほんとだもん!うそじゃないもん!


    という幻覚から生まれた深夜のサバ缶で優勝する赤安

    #赤安

    「う……ん……」
     喉の渇きを感じ、ぼんやりと意識を取り戻すと、逞しくそれでいてやわらかな触り心地の胸板が目の前を塞いでいた。首を後ろに傾け枕元のスマホをタップすると、日付が変わって3時間経ったところだ。
     先ほどまで互いの体液でしとどに濡れていた身体はいまやその痕跡を残さず綺麗さっぱりだ。隣で降谷の腰を抱き、ぐっすり寝ている男が後処理をしてくれたのだ。
     以前、後処理をされるのが恥ずかしいから何もしないでいい、と降谷が言い張ったことがあった。
     だが、絶頂の余韻から帰ってこられず、まともに指一本も動かせない状態では自分でシャワーを浴びに行くこともままならない。結局言葉での抵抗も虚しく、降谷がベッドの上で小さな死を迎えるたび赤井は甲斐甲斐しく世話を焼いた。
     いわゆる賢者タイムと呼ばれる事後に、そんなふうに接してくれる赤井に自分はとても大事にされているのだと思い知り、抵抗するだけもう無駄だと、大人しく受け入れるようになったのはいつからだったか。
     それに、ふわふわした気分のまま赤井に身を委ね、赤井の温もりに包まれながらいつの間にか眠りに落ちてしまう瞬間が降谷は嫌いではなかった。
     昔からコイツは僕に甘すぎるのだ。
     気持ちよさそうに眠る愛しい恋人を起こさないようそっと腕の中から抜け出した。
     張り込み中さながら気配を消し、下着とシャツを身につけ、足音を潜め水分を求めてリビングへと向かう。
     冷蔵庫を開け、庫内灯に目を細めながらミネラルウォーターを取り出し一気に煽る。火照って渇ききった身体に水の冷たさが染み渡るのが心地いい。
     喉の渇きを癒したら、今度は別の欲求が顔を出した。
    「お腹空いたな……」
     冷蔵庫と棚の中を確認する。今ある材料で手軽に作れるもの。降谷は棚から鯖の味噌煮缶を取り出した。
     あまりベッドを空けていると赤井が起きるかも、と思いつつ、空腹には抗えずカコッ、と小気味よい音を立てて降谷は缶を開封した。
     そこへバターを一欠片とにんにくチューブをひと絞り。鯖をほぐしながら混ぜ合わせ、上にはピザ用チーズをたっぷりかけてオーブンへ投入した。即席鯖缶グラタンだ。
     こんな夜中に、と若干の罪悪感が湧くが、その罪悪感があるからこそ夜食というものはさらに美味しく感じるのだ。それに手軽に作れてしまうのでついやめられない。
     オーブンをぼーっと眺めながら焼き上がりを待っていると、下着だけを身につけた赤井が寝室からペタペタと足音をたててリビングへやってきた。
    「零くん?」
    「あっ起きちゃいました?」
    「なにしてるんだ?」
    「ちょっと……お腹空いちゃって」
     ひとりで勝手にすみません、と謝る降谷の隣までやってきた赤井は流れるような手つきで降谷の腰に手を回し、冷蔵庫の上のオーブンを覗き込んだ。
    「美味そうな匂いだ」
    「あ……、鯖缶ひとつしかなくてこれしか作ってないんですけど……半分食べるか?」
    「君がいいならいただこうかな」

     出来上がった鯖缶グラタンを挟んで2人テーブルに向かい合って座った。
     先に食べますか?と聞くと、君が食べたくて作ったんだ、君からどうぞ、と返される。
     いただきます、と両手を合わせ、溶けたチーズに箸を沈める。つかみ出した鯖はとろけたチーズを纏ってほかほかと蒸気を立てていた。ふー、と息を吹きかけ頬張ると、鯖と味噌の濃厚さがチーズと絡まり、コクのある旨みが口いっぱいに広がる。
    「うん、美味い!赤井もどうぞ」
     洗い物が増えるだろう、とのことで箸は1人分しか出していない。自分の使っていた箸を渡そうとすると、赤井はまるで餌待ちの雛鳥かのように口を開け、首をこちらに傾けた。
    「えっ」
     何を求められているのかを瞬時に理解し、思わず顔が熱くなる。
    「俺は箸を使うのが苦手でね……」
    「……この前ラーメン普通に食ってただろ」
    「そうだったかな?」
     とぼけやがって。どうやら引く気はないらしい。
    「ほら。熱いぞ」
     箸でひとつまみ掬い、赤井の口元へ運ぶ。ほかほかと漂う湯気と、伸びたチーズが食欲を誘う。
     が、先ほどまで開けていた口を閉ざした赤井はなぜだか食べようとしない。
    「赤井?」
    「……熱そうだから零くんが冷ましてくれ」
    「はぁあ!?……も〜、なんです?さっきから……子供かよ」
    「ホォー、君は子供相手にあんなに乱れてしまうのかな?」
    「……バカッ」
    「はははっ」
     先ほどまでベッドで濃厚に睦み合っていたときのことについて揶揄され、思わず向かいのふくらはぎの辺りをつま先で軽く小突いた。
    「俺も零くんに甘やかされたい気分なんだ」
     零くん、と期待を込めた眼差しに見つめられる。
     愛おしそうに目を細めた赤井に気恥ずかしくなりながら、しぶしぶ箸を自分の口元へ戻した。
     顔にかかる髪を耳にかけ、ふー、ふーと漂う湯気を散らす。こんなもんかな、という頃合いでもう一度赤井の口元へ箸を運ぶ。
     さっきまで自分を貪り尽くした唇は箸を柔らかく喰み、鯖をゆっくりと口腔内へ迎え入れた。
     なんだかそんな仕草すら色気たっぷりでセクシーでかっこいい。悔しいからそんなこと口に出しては言ってやらないけれど。ただ食事をしてるだけなのに、そう感じてしまう自分は変態なのかも。
     降谷は跳ね上がる鼓動をどうか気づかれませんようにと祈りながら赤井の表情を眺めた。
     咀嚼しながらうん、と満足そうな表情を浮かべる赤井に美味いでしょう、と気をよくした降谷は適温に冷ましたグラタンをまた赤井の口元へと運んだ。
     あの赤井秀一のこんな姿、きっと自分しか知らないのだ。そう思うとなんだかたまらない気持ちになってくる。
     コイツと知り合ってから、いつだって自分の頭の中は赤井のことばかりだ。どんな時も一瞬で自分の世界は赤井一色に塗り替えられてしまう。もう今だって十分赤井しか見えてないのに。これ以上、夢中にさせないでほしい。
     ドキドキ胸を打つ鼓動に、降谷は落ち着き始めた体温がまた上がる心地がした。
     たわいもない会話を交えながら交互に2人で仲良く食べあうと、缶はあっという間に空になった。
    「食べちゃいましたね」
    「あぁ、美味かった」
    「あ〜あ、運動しないとな……」
    「付き合うよ」
     椅子から立ち上がった赤井がいつの間にか隣に来ていて、頬に優しく触れられる。撫でさするその手つきがなんだかいやらしい。
    「あ、コラ。まだする気ですか?」
     頬をやわらかく撫でていた親指が、今度は上唇、下唇と順にゆっくり辿っていく。
    「また君が欲しくなった。……もう限界?」
     額を合わせて囁かれる。この空間には2人しかいないのに、まるで内緒話でもするみたいに声を顰めて会話する。
    「ていうかにんにく、食べちゃいましたよ」
    「お互い様だろう?」
    「ん……」
     自然と引き合う唇。ちゅ、ちゅ、と優しく啄まれ、最後にぺろ、と意地悪な舌が唇を捲る。
     それだけで腰のあたりがゾクゾクして、お腹の奥がじんわり熱を帯びてダメになってしまう。潤んだ目で赤井を見つめると、目尻に皺を作って幸せそうに微笑む愛しい男の姿があった。
    「チーズの味がする」
    「ばか……」
     降谷が返す言葉にもう強さはない。
    「はみがき……してからする」
    「うん」
     そう呟いた降谷は赤井に手を引かれ、洗面所へとエスコートされた。
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