🐶煩わしさに意識が覚醒する。
早朝、きちんと遮光がされた広い寝室の、これまた広いベッドの上、虎於はもぞりと身じろいた。
この音はトウマが使っているアラームのはず。フレーズが途切れ、しかし再びおなじメロディーが始まった。叩き起されたに等しい状況に不機嫌さを隠さず枕を抱き込み、眉間にしわを作ってみせる。自分が動くという選択肢はなかったので態度に示してみたけれど、一向に音が止む気配はない。ランニングには持っていくやつだから、シャワーでも浴びているのかもしれない。
消し忘れなんて珍しい、せめて確認してから出ていってくれ。
胸の内でため息を吐きながら手を伸ばそうとした矢先、ちゃか、と頭のすぐ後ろで音が鳴る。
なんだろう、例えば窓やガラスに硬いものが触れたときとか、そんな軽い音。でもそれほど重量はなくて、悠がスマホの液晶を爪でつついている時もこんな音がしているかもしれない。
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