高校の入学式やらが終わり帰ろうと門を前にしたところで「正国ー！！俺だ！久しぶりだなあ！」と突然声をかけられ振り向くと全然見た事もない背の高い同学年だと思われる男(おて)がニコニコ笑顔でいる
　記憶を探ってもこんなぴょんぴょん髪が跳ねていて顔が整って背がとんでもなく高いなんて特徴のある人間は忘れようもないはずなのに思い出せないので「…あー？人違いだと思うぜ」と真顔でたぬは返すのだけど、おては「うえ？」と謎の奇声を発し目をパチクリさせながら不思議そうに首を傾げてくる
　いや首傾げてえのはこっちの方だがと一瞬どちらも時が止まるが、次の瞬間にはニコニコ笑顔で花を飛ばしながら「そうかあ、正国は何組だったんだぁ？」と何事もなかったかのように聞いてくるので完全にやべえやつに目つけられたかもしんねえてなるたぬ
　「いやだから、あんた人違いしてるんだって！じゃあな」と強制的に話を終わらせて早歩き超えて競歩しても、長い足でニコニコついてくるし「人違いでも問題ねえからさぁ、組教えてくれよぉ…あ、俺御手杵！御手杵な！」とすごいぐいぐいくるし発言からひしひしと色々ズレてるのを感じてこのままだと家がバレることに危機感を覚えるたぬ
　反復横跳びしながら隙を窺うけどもおても反復横跳びしてついてくるので「いやあんたが問題なくても俺はそうじゃねえんだよ！！」と大声で投げかけると「ええ？なんでだあ！？」と衝撃を受けて隙が出来たので横をすり抜けて全力疾走するのだけど、後ろから「うわ！ずりいぞ正国！競争なら一緒によーいドンだろ！？」とか言いながらとんでもねえ速さで追いかけてくるのでいろんな道を通ったりして撒けたか…と思いながら部屋に入ろうとした所を「うえーちょっと負けちまったかぁ…でも正国ズルしたから同着でいいよなっ」と弾んだ声が後ろから聞こえて来て振り向くとおてがいる
　「ここ、正国の家？」とキョロキョロした後、「うえーどうしよう…ここどこだぁ？引っ越してきたばっかで帰り方わかんねえ」とさっきまでとは打って変わって迷子の子犬のようにしょんぼりしだしたので「はぁ、学校に一緒にもどってやろうか？」と思わず言ってしまって、即座に「いいのか！？ありがとなぁ」と満面の笑みで返されて付き合うことになる
　結局コンビニで飲み物を買ったりだのして一緒に学校まで行くし、門の前で片手を両手で握ってきて「正国ありがとう！これからもよろしくな！」とぶんぶん降ってから「おう…」と呆気に取られてる内に手が離されて、おては手をぶんぶん降って「また明日なあ！！」と帰って行くし「じゃあな」と頭がこんがらがりながらどうにかたぬはばいばいする