さらぐれぱいろふぁいあふぇにっくすぎあふり@ 授業が終わると同時に、アクアは机から本を取り出した。栞を挟んでおいたので、授業開始直前まで読んでいたページをすぐに開くことができる。裏表紙側から、もう終盤に差し掛かる目当てのページを開いた。住み家を追われ旅立った主人公の老婆がいよいよ決戦の地へ向かおうとしていた。
しかしここは休み時間の教室である。
どうしたって静かな環境にはならないのである。
「――じゃあさ、もういっそ全身ファイアフェニックスにしちまおうぜ。ファイアフェニックスアーマー的な?」
「ふむ……どうなるかわからないが、試しに一度描いてみるか」
「……」
「……」
「……おおー、まとまったんじゃね!?」
「全身ファイアフェニックスで無理やりまとめたからだろう。しかしまあ、まとまってはいるな……これをベースに進めるか」
「じゃあさじゃあさ、ここのパーツはパイロの――」
後ろの席が異様に盛り上がることだって、ままあるのである。
決戦へ向かおうとする老婆の準備は遅々として進まない。
アクアはつい、がたんと音を立てて立ち上がった。
「こらそこ、男子! うるさいですよ!」