⬜🐱とお化け屋敷「遊園地というのはなかなか行かなかったので楽しいですが……心夢先輩、休みましょうか?」
俺は買ってきたジュースをベンチで疲れてる先輩に渡した。
バイト先の人から遊園地のチケットを貰ったということで誘われた。遊園地…子供の頃は殆ど行くことはなかったな。
「はー…はー…」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫…だ、が…」
「沢山乗りましたもんね、コーヒーカップにジェットコースター、バイキング…あ、今度はここに行きたいです」
「…あんま見たことないぞお前のそのビー玉みたいにキラキラした目」
「でもその前にお昼にしましょう。売店で買ってきたので」
そう言って俺は先輩に売店で買ってきたホットドッグを手渡した。ここの遊園地のホットドッグは味も良くソーセージにもこだわっていて、通常のより特大のサイズってのもあって大人気だ。
隣にいた先輩に追加でお茶を渡そうと振り向くと、ホットドッグにかぶりついていた。
パリッ!とソーセージの音がいい。一緒に挟んでる野菜も美味しそうだ。
………ちょっとかぶりつくの、かっこいいな。
大きく一口食べるのはあまりしないが…と先輩の真似をして大きく口を開けてかぶりついた。……ソーセージ大きいな。
ちらっと先輩を見るとまじまじと見られてたので思いっきりソーセージを噛みちぎった。…何を思ってたのか青ざめてた………ざまぁみろ。
「なぁ、黒江。乗り物以外にこういうのはどうだ?」
「お化け屋敷…確かここの遊園地のお化け屋敷って本格的なのが人気で実際に出るらしいですね」
「噂だろ?行くか?」
「そうですね……」
「もしかして苦手か?」
「いえ。苦手だったら1人暮らしもつらいですよ」
「あ、そうか」
正直相手が人だと分かれば全く怖くない。
舞台は廃墟となった病院。作り物はリアルでお化け役のスタッフの気合いも迫力とメイクでわかる。
そう思ってる俺の隣で「おおっ」と驚いてる先輩。情けないとは思ってない。…ただ驚いて走った時転けないだろうか。そんなことしか考えてない。
「結構怖いな…」
「そうですね(棒読み)」
「なぁ、気を紛らわせるのに聞きたいんだが、なんでさっきから何も無いところ見てるんだ?…まさか猫みたいに視えてrいっで!」
「仕組みがすごいなと見てたんです。次言ったらシバキますよ」
「ここも怖いが黒江も怖ぇ!?」
「…ん?」
何か聞こえてくる音。ギャリギャリという音が次第に大きくなってきた。そして現れたのは、赤く染ったチェンソーを引きずってる返り血浴びたであろう白衣を着た医者。
そういえばここのお化け屋敷って…『狂った精神病院が襲いかかってくる』って入口に書いてあったような
「っ!?黒江!!走るぞ!!」
「走るってあれも中身人ですよ…ってちょっと先輩!」
その瞬間、チェンソーが振り落とされその時起きた風が体に当たった。チェンソーは実際に動いてるし…
何よりホログラムとかでもない…仕組みじゃない!?
先輩の後を追うように逃げる。その後ろには狂人と化した精神科医。チェンソーを振り回す度に人形の首や体の一部が飛んでいく。今のところは何とか距離を離してー
「わっ!?」
もうすぐ出口って所で小道具の椅子に足が引っかかって転んでしまった。椅子に引っかかって外れず、目の前にはチェンソーをふかした精神科医。
体が動かない。その時、心夢先輩が椅子を足から外して手を引いて走り出した。
そしてやっと出口に出て後ろを振り返る。あのチェンソーの音も狂人もいない。
「な、なんだったんだ今の、大丈夫か黒江」
「はい…ありがとう、ございます」
「にしても過激すぎだろ…ここのスタッフにくれーm」
ギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリギャリ!!!!!!
「「わーーーーーっ!!??」」
パシャッ
「「……え?」」
「お客様ナイスリアクションでした!いい写真になりますよ〜」
目の前には白衣…は着てるかカメラを持ったお化け屋敷のスタッフだ。
「いや〜それにしてもお化け役のスタッフが背後に立つ程怖かったみたいですね!き合って…仲がよろしいんですね?」
「え?…あぁ!?すみません先輩!」
「いや、俺は…てかここのお化け屋敷過激ですよ!いくらなんでもチェンソー振り回して追ってくるのは!」
「はい?そんなことしてませんよ?そしてチェンソー?そんなの振り回したら警察の人のお世話になりますよ〜」
「え?でもここって廃病院を舞台に…」
「はい。確かに実際の廃病院を改築しましたが、ちゃんとお祓いしてますので」
「「もう一度ちゃんとお祓いしてください!!」」
あの後小道具も壊れてたことからお化け屋敷は一時休止となった。その後制覇するつもりのやる気はその1件で一気に疲れが出て最後に観覧車に乗ることにした。
「散々な目に遭ったな…足赤くなってるけど大丈夫なのか?」
「はい。引っかかっただけなので」
「お前、怖いの平気と言ってたけど本物にはビビるんだな」
「先輩は先に驚いてもいたし走ってたじゃないですか!」
「本物だったらなぁ〜」
「ってか、その話思い出させないで下さい…!」
「やっぱり怖いのか?」
「…………怖かったに、決まってるじゃないですか…本物、ましてやあんなもの振り回されたら…正直腰が抜けかけました…」
……正直に話せば話す程、その時の恐怖がよみがえってくる。声も手も微かに震えて情けない。
「黒江」
先輩の声が優しく俺の名前を呼んで、抱きしめてきた。
「怖かったなぁ」
「…先輩も怖がってた…」
「でも黒江を助けることが出来た」
「……ありがとうございます……あの、もっと強く抱きしめて下さい…怖いのが…なくなるまで…沢山…」
「デレが強いなぁ〜。もっと素直になってもいいんだぞ?」
「……先輩、今日だけ一人で寝るのが怖いです」
「じゃあ泊まりに行く」
「…くっついてもいいですか?」
「思う存分」
どれだけ怖かったのか沢山…して欲しいこと言ってしまった。…でもそれを心夢先輩は笑って撫でてくれたから。今日だけ沢山甘えさせてもらおう
後日、遊園地から無料パスを貰った。それも6枚目。恐らく1人3回ということだろうと思うけど、今度は3年生の先輩達誘って見るのも悪くないな
……もうお化け屋敷は行きたくないが…!!