成就?(ぬら救)「何色にも染まらない、綺麗な白色の女の子ですね。ですが今の子の状態では怪異等に捕まってしまう」
「怪異…!?そんな馬鹿な…」
「でも性別も変わってるし、なにか見えるみたいで…それにこの神主さんが言うなら間違いないと皆話していたわ。なにか方法は何のでしょうか…?」
「今から封印の首飾りを作ります。常日頃身につけるようにして下さい。不思議な力を持つ今の姿は封印され守れます。但し代わりに性別ごと変化します。この子は、これから男の子として生きてい来ていかなければ。その覚悟はおありですか?」
「…はい、娘を…『蒼空』を助けられるなら…!」
「そうだな。この子を守れるなら、お願いします!」
これは記憶が夢に出てきてる…幼いけど…鏡に映ってるのは…女の僕と…あの首飾りを付けられてる…
つまり…僕は……
混浴のことがあった翌日、イヅナ達は今回の体の変化についての報告と滝夜叉姫からの依頼で1度夜叉ノ國へ戻り、救い主はそれまで堺城に留まることになった。だが数日間
「…はぁ…」
「なんだ?団子食わねぇのか?」
「え?あぁ、多分ご飯沢山食べたからかな〜」
「飯もあんま食わなかったじゃねぇか」
「あー…そうだっけ?」
「ここ何日も続いてるじゃねぇか。どっか悪いのか?急に女になったからか?休んだ方がいいんじゃねぇか?」
「し、朱の盆が心配してくれた上にまともな事言ってる…!」
「あ?どういう意味だ?」
「いひゃいれふ、ごへんっへ!(痛いです、ごめんって!)」
そう、何故かあの混浴の出来事以来食欲がないのだ。朱の盆の言う通りどこか具合が悪い…のだろうか。それとも……
(いやありえない。確かにそう考えると納得するけど僕は…救い主だ)
朱の盆が手を救い主の額に当てるも「熱はねぇなぁ〜」と呟く。
「ありがとう朱の盆、今日は御館様から首飾り貰いに行かないといけないから休まないよ」
「そうか?まぁ俺も着いてるし何かあったら言えよ?……」
「ん、どしたの?」
「御館様!!!!!」
一瞬、悩みの種にもなりつつある人物の名前に驚いたが、それよりも鼓膜が破れたかと思った。キ---ンッと耳鳴りがする中前を見ると、離れたところでぬらりひょんと煙羅煙羅が会話をしていた。それを見た朱の盆はまるで柴犬のように目を輝かせている。そして朱の盆の大声が聞こえてただろう。2人はこっちを向いた。
「黄泉、行こうぜ!」
柴犬のように尻尾をブンブンしてるように見える朱の盆。だが…悪気は無いけど今は会うのに躊躇している。
「僕ここでお茶飲んでるから会ってk「いってくる!!」
「食い気味…そして五月蝿いぃ…!」
また襲ってくる耳鳴りに参ったと耳を塞ぐが詫びることなく嬉々として駆け寄った朱の盆。それに笑う煙羅煙羅。目を伏せるぬらりひょん。遠くでも聞こえる程朱の盆の声はでかいからどれだけ嬉しいのかよく分かる。それはそれでほのぼのしてて見ていられる……
「…あ」
ふとぬらりひょんと目が合い思わず逸らした。
(…あれ?なんで逸らしたんだ?…顔怖いから?でもいつも会ってる…あれ?会う度に逸らしてる気が…とりあえず朱の盆の言う通り部屋で休んでよっと)
「御館様?」
「黄泉はどこに行った」
「え…あれ彼奴どこ行った?」
「一緒にいろと言ったはずだが」
「申し訳ありません!多分部屋に戻ったんじゃないかと。具合が悪そうでしたから!」
「そういえばここ最近食欲無いねぇ」
「熱計ったんだがよ熱もねぇんだ」
「…ふぅん」
「ん?煙羅煙羅。なにか心当たりあるのか?」
「…さぁねぇ。どうでしょうか?御館様」
「……」
「救い主様は人間、原因不明の病にかかってるかもしれません。今は平気と放って置かれるのですか…?」
「……」
じっと見るぬらりひょんにあぁ怖い怖いと口元を袖で隠して笑う煙羅煙羅。それになんの事だ?と疑問のマークを浮かばせて首を傾げる朱の盆だった。
「んー…横なろうと思ったけど大したことなさそうなんだよなぁ」
食欲がなく、溜息つき、そしてぬらりひょんを見る度に目を逸らして避けてしまう。原因は間違いなくあの温泉での出来事だ。
「…そうだよ、御館様があの時触れたりしてきたから…あれ?」
その時の記憶が甦る。
皆と入った温泉。
喧嘩する朱の盆と鉄鼠。
それを止めるイヅナ達。
そこで隠れてたけどばったり会ったぬらりひょん。
そしてそこで話し励まされ、撫でられ、て……
思い出した記憶が濃くなる度にあの時のように顔が熱くなる。鼓動が五月蝿い
「…まって本当にもしかして僕は…………いや、違う。うん、そうだよ、僕男だし、それに御館様があんなことしたから緊張して疲れただけだ。うん、そうd」
「俺がなんだ?」
「ワヒャア」
素っ頓狂な声を上げてしまった。突然部屋の入口に立っていぬらりひょんは何事もなく入ってきて、座り込んだ。
「随分と変な声を出す」
「御館様が急に来たからですよ!!」
「で?俺が何をしたから疲れたんだ?」
「無視ですか!?…って、もしかして首飾り持ってきてくれたんですか?ありがとうございます」
「首飾りはいい。答えを聞かせろ」
「首飾り大事ですよね!?性別変わったんですから!?」
「聞かせろ」
「……えーと、言わなきゃ駄目なんですか?」
「体調を崩してるのだろう?その理由を聞いもいいだろう」
「…そういう事は朱の盆や煙羅姐さんと相談します」
「2人は暫く戻らない」
「……」
逃げられない。
そう察した救い主は深呼吸して五月蝿い鼓動を落ち着かせてその場に座った。
「あの混浴以降、食欲がなくて…多分体の影響かと思ってるんですが…」
「体の影響で俺を避けてたのか?」
「それ、は…ごめんなさい悪気はないんです…でも御館様を見る、思い出す度…体調が良くなくて…」
「…では、こちらを返そう。俺はこれで失礼する」
「…っ!」
考える前にぬらりひょんが首飾りを渡そうとした手を掴んでしまった。
「…あ、の、これは…」
「これはどういうことだ」
「このままは駄目だと…思って…!僕が、こんな……『恋煩い』みたいなこと…になってしまって、それを御館様のせいにしてしまうのは…!!」
救い主の言葉に少し目が見開いたぬらりひょん。救い主は顔を赤くするもゆっくりと話した。
「女になった時、記憶が戻ったと言いましたよね?ぼんやりですが神主のような人が話してるのを少し思い出したんです。『何色にも染まらない少女』とか『男の子として生きなさい』とか…御館様の予想通り、今の姿が本当の姿でした。でも僕は男だとずっと意識してて、御館様にこんな想い持つのに違和感拭えなくて…」
「……」
「それに僕は救い主。幻妖界を助けるのが役目。だから御館様、1度だけ僕の事を強く否定して下さい。もし本当に御館様に恋愛感情持ってるならこの想いも恋煩いもなくなりますから」
「……」
ずっと黙っているぬらりひょん。それでも救い主は言い切った。胸が痛くなり否定したくなる気持ちも押さえて、ここで言ってくれないとぬらりひょんに対しての恋愛感情が大きくなってしまうから。
だが、ぬらりひょんはゆっくりと救い主に近付き再び座ると、そっと頬を撫でた。突然のことに救い主の肩が跳ね上がる。
「おや、かたさま…!?」
「……」
するすると温泉の時のように優しく撫で、耳朶を軽く摘み耳を撫でる。どくん、と大きく鼓動が響く。顔が熱くなる。
「…俺はお前に好意を持っているからこんなに触れている」
「……え?」
突然の告白に固まる。そんな救い主を他所にぬらりひょんは続けて話す。触れてた手は今度は白い髪に触れる。
「救い主として、お前はよく頑張っている。安倍晴明に立ち向かう。それは俺たちの助けになっている。そしてなにより俺達妖怪を大事にしてくれる…」
「ぁ…その…」
「俺はお前だから惹かれたんだ。だからあの時もお前に触れたいと思った。救い主としてではなく、黄泉、お前を求めてた。ずっとこの手で愛でたいと…」
「…ぁ…ぅ…」
鋼並みのメンタルはどこかにいったのか、それとも予想外のこの状況に頭の中が真っ白になってるのか言葉が出てこない。
「え、と…あの……」
「…あ?」
「…恥ずかしいです…心臓…痛い、です…でも、嬉しい、です…!」
「…良かった」
「っ…はい…え?」
何とか笑えた…嬉しさが勝って緊張が解けた…そう思った瞬間だった。
仮面をいつの間にか取っている?いつの間にこんなに距離近くなった?
そう思っている中、唇から感じる感触と熱は最後でやっと気付いた。勿論何されたのかも…
「…本当はあの時にしたかったが…こうして伝わったのだからいいか……黄泉?」
ぬらりひょんが一言声をかけた瞬間、顔を真っ赤にした救い主が前に倒れた。
「初な奴だな…」
メンタルが鋼並みの此奴が…と思わずくつくつと笑った。
後日、
「やぁやぁ黄泉くん!今回のことはすまなかったねぇ」
「あ、元凶の隠神刑部様」
「え?酷くない?いや、僕が悪いんだけどさ。ところで首飾りぬらりひょんから貰ったかい?」
「はい。おかげで元の姿に…あー元の姿ではないですが…」
「知ってるよ。女の子の方が本当の姿なんだよね?首飾り壊しちゃった時確信してたからね。ところで…ぬらりひょんと黄泉くん、なんでそんなに距離離れてるの?喧嘩?」
「あっ!あーーいやーそれは…」
「え?ぬらりひょん?黄泉くんに一目惚れしたんじゃなかったっけ?」
「………ん?」
「一目惚れしたのに喧嘩しちゃったの?そこんとこ教えてよぬらりひょん?ねぇっt」
「あ"?」
無事首飾りも直り、ぬらりひょんとまた深い仲になったが、真実知ってまた固まった救い主だった。