あくろす小咄(パンクとインディア)「そら、オマケだ。持っていきな」
「わぁああ、こんなに! 有難う、マダム!」
「いつも悪いな」
「なぁに、悪童が可愛い子連れてきたんならサービスするってのが人情だろ」
「まだ未成年だ。手を出してくれんなよ」
「出すか! ウチらをなんだと思ってんだ!」
「あははは! また来るわ!」
「味は」
「む! ほぃひ!」
「ふははっ、リスみてぇ」
「んむ………ほぐひぃ」
「口んなか片付けてから喋れよ、噎せっぞ」
「………ん! 意外だったな、って言いたくて」
「なにが」
「………あのさ、君の前でしかも君の地元で」
「ん」
「その、言葉は悪いけど………ブリティッシュ自体の料理って、『美味しくない』って言うだろ?」
「ああー、言うな、言う。階級ごとに食いもんも違ってたし」
「うん、そこ僕も教科書で読んだ。一般的なオススメもフィッシュ・アンド・チップスしか知らなかったから。こういうの食べられるの嬉しいよ!」
「異文化交流ができてなによりだ」
「今度僕のとこにも食べに来てよ! 美味しいご飯、いっぱいご馳走するから!」
「パヴんとこの料理か………って、どうせ大盛り予定してんだろ。さては俺を太らせる気か?」
「ホービーが細すぎるのがいけないんですー、この腰とか! 何食べてるのさ! 僕の知ってるシャーマンでもこんなに細くないよ!?」
「おいこら、手癖悪ぃな! 仕置きされてぇか!」
「わわわわ、いたたたたた! ギブアップ! ギブアップ!」
「——」
「…………HB?」
「俺の肩越し、見てみろ。気付かれるなよ」
「………あの一団?」
「…………」
「…………」
「…………ホービー」
「なんだ」
「ひとつ聞いていい……?」
「さっきの連中か」
「うん、あいつらって、《なに》?」
「ファシスト共の子飼い。権力者に首輪で繋がれて必死に尻尾振ることに無上の喜びを見出してるクソ連中だ」
「お揃いのエンブレム服で、仲良しアピールすごかったね……みーんな似た顔つきに見えたよ」
「やってる事は事実クソッタレだから、ああいうヒデェ顔になるのさ。市民達の抗議活動やそれを支援する連中に難癖付けて、力づくで妨害すんのが連中の日課だ。『うちのエンブレムを勝手に使うな』って声明出した企業がどうなったと思う? 即日取り囲まれての焼き討ちだ。今もまだ裁判沙汰になってる」
「ぅわぁ………それって警察や軍は」
「止めると思うか?」
「思わない」
「正解。建国記念日が近い。ああやって大手を振ってんのも俺らや市民への威圧目的。騒ぎの種になるやつぁ、根こそぎって狙いだろうよ」
「誰のための記念日なんだろうね。——ね、ホービー」
「ダメだ」
「まだ何も言ってないのに」
「こっちは俺のアース。お前にはお前のアースがあるだろ、パヴ」
「それって命令?」
「俺が命令嫌いって知ってて言ってるな?」
「言ってる。僕やグウェンにそれをしないってのも」
「察しのいい悪友を持てて幸せだ」
「褒めてくれるの嬉しいけど、譲歩する気は?」
「ないな」
「グウェンには」
「『暫く忙しい』『暇んなったら知らせる』って送っといた。ミゲルやジェシカならなんやかんや任務振んだろ」
「……………」
「パヴィトル」
「………ホービーってそういうとこあるよね」
「あん?」
「自分でぜーんぶやろうとしちゃうじゃないか」
「自分のことは自分でやるもんだろ」
「僕だってホービーの役に立ちたいのに」
「ロックロールな寝相をアップグレードしたら頼ってやるよ」
「茶ー化ーさーなーいー!」
「おーおー揺れる揺れる、こりゃ首折れるな」
「嘘!?」
「嘘。けど一般人にやったら折れるやつだぞ。間違ってもGFに……」
「やらないよ! ガヤトリィ、すっごく素敵でいいコなんだから!」
「知ってる。会う度、何百回も惚気を聞かされてるからな」
「そんなに!? ………盛ってない?」
「むしろ減らしてる」
「仕方ないじゃないか、実際素敵なコなんだから」
「お前のそういうところを俺も愛してるぜ、悪友」
「………あーもー分かったよ、でも! ほんとに困った時は頼ってよね! 僕だって君の友達だし、とびっきり優秀なんだから!」
「………ふ、覚えとくよ」