ある日のLINKVRAINS「現れろ!未来を変えるサーキット!ヒートライオをリンク召喚!リンク召喚成功時の効果で伏せカードを1枚デッキに戻す!リザウディング・ロアー!」
「それにチェーンして速攻魔法発動!クイックリボルブ!デッキよりマグナヴァレットドラゴンを守備表示で特殊召喚する!」
「おい見ろよ!リボルバーとソウルバーナーがデュエルしてるぜ!珍し~!」
「こんな人もあんまこないようなエリアで有名人同士のデュエル見れるとか今日はツイてるなあ」
そんな外野の声も気にしないかのように、Dボードの高度はぐんぐん上がる。
もはや地上からでは細かいデュエルの様子は分からなかったが、効果の応酬を見るに決闘はヒートアップしているようだ。
「これで終わりだ!ヴァレルソードドラゴンでヒートライオに攻撃!電光のヴァレルソードスラッシュ!」
「ぐあああ!」
しばらくの間激しい盤面の取り合いが続いていたようだが、竜が炎の獅子を討ち取った。
どうやら決闘はリボルバーの勝利で終わったようだ。
「いやあ白熱してたなあ…面白いものが見れてよかった」
「でもなんでこんなとこで決闘してたんだろうな、知らない間にまたLINKVRAINSで事件とか起こってたり?」
「案外くだんねーことだったりして」
「まさかあ!ソウルバーナーはともかくリボルバーはそんなホイホイ表舞台に出てこねえだろ~」
そんなガヤを背に2つの影はほぼ同時にログアウトしていったようだった。
そうして。
「うわー!負けた!」
「私の方が1枚上手だったようだな」
「ヴァレル、対象にならないとか破壊されないとかズルじゃん、ほんとに」
「転生炎獣は破壊効果が多いデッキだから、最初からヴァレル達で攻めると決めていた。これでもヒートライオとミラージュスタリオに盤面を返された時はどうしようか悩んだんだ」
「あー立ち上がりは割と遅いもんなそっちのデッキ」
先程まで真剣な顔で決闘をしていた彼らは現実世界でカードを並べながら感想戦に及んでいる。
「ところで」
「なに?」
「感想戦もいいが、先程の約束は」
「…」
「おいまさか『ログインして決闘して決めよう』という提案は話を有耶無耶にするためではないだろうな」
指摘は図星のようで、じとりと睨みつけられた男はすっと目を逸らした。
「負けたのだから大人しく風呂を掃除しろ」
少し前。
居心地のよいソファーでゴロゴロと寛いでいる所に、上からぬっと影が落ちる。
「おい、もう夕方だぞ、風呂の掃除はどうした?今日はお前の当番だろう」
この家に2人で住むに当たって、家事は分担する。最初はお互い気を遣わないための取り決めだったはずなのだが、そんな生活が長くなり、お互いの距離が近くなるにつれて気遣いは薄れてくる。良い意味でも、悪い意味でも。
「お前ん家の風呂広いからめんどくさいんだよ…あそうだ、決闘して負けた方が掃除することにしない?」
「断る、何故私に得がない勝負を受ける必要があるんだ」
「へー僕に勝てる自信ないんだぁー?無敵のハノイの騎士のリーダー様がぁー?」
起き上がり、勝負から逃げようとする彼を煽り散らかす。いつだって冷静沈着そうだが、こいつは意外と熱くなりやすい。そのことを付き合いが長くなった男はよく知っていた。
「…上等だ、受けて立つ」
「よし決まり、折角だしログインして決闘しようぜ、なんか賭けて決闘すんのも久しぶりだしさ」
「いいだろう、その代わり私が勝った暁には覚悟をしておけ」
「分かったけど、負けないからな」
デッキをセットし、声を重ねる。
「「Into the VRAINS」」
そうして、風呂掃除を押し付け合うというくだらない決闘(本人たちは至って真剣だったのだが)の決着はついたのだった。
「お前から持ちかけた勝負だろう、負けたのだから大人しくやれ」
「ええーホントにめんど…1日くらい掃除しなくてもよくない?」
「そう言ってサボっているとあっという間に積もり積もって更に面倒になるぞ、水回りは特にそうだ」
「はー…几帳面すぎるだろ…。もう遅いし2人でやろうぜ…そっちの方が早いだろ…飯も一緒に作るからさ…」
「最初からそれで良くなかったか?」
「うるさいなあ」
カードを片付け、同時に立ち上がる。気だるげな声とは裏腹に、2人は楽しげな顔をしていた。
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アニメだとスピードデュエルでヴァレット使わなかったのは置いといてくれ