大人になったら教えてあげる長い髪、バニラのコロン。紫色の瞳。ころころと変わる表情。きらきら光るように見える光。鬱陶しくてたまらない。ああ、やっぱり俺は──この男が、嫌いなのだ。
「松田くんは優秀なのになんで俺の授業だけ課題出してこないの?他の科目は出してるっぽいけど」
「あんたが鬱陶しいから」
誰もいない教室、この男と二人っきり。黒板に書かれた説明概要は、困り顔で書きかけで消された。松田は授業内容自体は理解しており、そんなものなくてもわかるからだ。
教卓の上、肘をついた男。柔らかくこちらを見る視線に心音が高鳴って胸焼けがする。顔が次第に赤まり、放課後の野球部やサッカー部の掛け声など、もう聞こえなくて、それなのに教師の息遣いはよく聞こえた。
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