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    コルテナ

    @kortena_ja

    20↑。文字書きです。最近金カム関連(勇尾)など書いてます。(元はDQ11ホメグレ等用。他シリーズはククマル/モブマル関連など)。

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    コルテナ

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    生産工場は勇尾ですが、これは勇尾として成立しないふたりのお話です。おがたがゆうさくさんから確かに受け取ったものがあるし、それを受け取ったことを認められたのが310という解釈で、二度目は受け取ったそれをゆうさくさんにもかえしたいと思ったりしてほしいな、というきもちで書きました。

    #勇尾
    Yusaku/Ogata

    ただ受け取ったものをかえすだけ腕時計に目を落とす。夏季休暇の空港を少々甘く見ていた。あとは搭乗するだけとはいえ、待つ身には気が気ではないだろう。足を早めて、人混みを少々強引に進む。ふと、後ろから自分を呼ぶ声がした。
    「勇作殿」
    決して大きな声ではないのに、よく通る低い声。足が止まる。振り返ると、歳のあまり変わらない男がこちらをまっすぐに見ていた。光を通さないような、真っ黒の瞳が、ひどく印象に残る。
    「あの、すみません……どこかでお会いしたでしょうか」
    人の顔と名前を覚えることは、不得手なほうではないというのに、彼の顔も名前も、全く出てこない。ならば初対面と断じていいはずなのに、なぜかためらってしまう。彼は小さく首を振った。
    「今から俺が言うことは、聞き流して頂いて結構です。なに、時間はかかりません。再びこうして姿を見ることになるとは思っていなかった。ただ、こうして向かい合った以上、俺はあなたに、伝えなければならないことがある。ははあ、戸惑ってますね。いいんですよ。狂人の戯言と思って頂いてかまいません。……俺は、かつて、あなたに多くのものを貰いました。その時は欲しくもないと思っていたんです。捨ててしまいたいとすら、いや、捨てたのだと思っていました。でも、本当は違っていた。あなたに貰ったものは、確かに俺の、“よすが”になった。本当です。それを直視したら、生きていけないと思っていたのに。……今でも俺は、あなたに貰ったものを抱えて生きています」
    耳に心地よく響く声。何のことを言っているのか、まるで理解ができないというのに、気を逸らせない。理解したいと、しなければならないのだと、何故だか強く思う。
    「――ご家族が呼んでいますね。最後に、これだけ、あなたに伝えたかった。……ありがとう。どうか、幾久しく健やかで」
    息子の呼ぶ声が、ひどく遠く聞こえる。表情を動かさなかった彼が、わずかに口角を緩ませて言った言葉に、胸が引き絞られるような痛みと、懐かしさを感じる。人混みに紛れていく背中に、なにかを言わなければならない焦燥がつのる。言うべき言葉が確かにあるはずなのに。
    「ありがとう、ございます……、どうかあなたも、幾久しく健やかで」
    同じ言葉を、気がつけば返していた。確かにあの人は自分になにかを差し出してくれた。差し出されたものを、自分も返さなければと思った。
    背中は雑踏に消える。お父さんはやく、と呼ぶ声がする。その声に向き直りながら、名も知らぬ人の、きっともう会うこともない人の、これからの幸せを、願わずにはいられなかった。
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