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    ragisan

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    ragisan

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    🐑🔮(🔮🐑)
    ふーちゃんがただノロケてるお話。
    当然ですが設定は捏造です。

    #phyborg
    #cychic

    【ぬくもり~継ぎ接ぎ男の独白】この身体の一部は機械でできている。
    両腕と両脚、首には濾過装置…見える範囲で言えばこれくらいか。内臓については…特に言及するつもりはない。
    その当時の最新のチタン合金で作られたボディは俺の最も好きな色合いで塗装されている。
    まぁ、ファッションの一部とでも言っておこうか。

    何が言いたいかって?
    俺はこのツギハギの身体に何の後悔もしていないって事だよ。寧ろ気に入っている。
    だがこの機械部分は生身より頑丈に造られているから「痛みも感じなくて便利だな」なんて言う奴も少なくないんだ。今日はその辺の話をしてやろう。

    まず痛みを感じるか否か、答えはイエスだ。
    俺の場合は、と付け足しておこう。
    性能はピンキリだからな。予算と嗜好の問題だよ。
    敢えて触感をカスタマイズせずに組み込む事もできるが俺はそうしなかった。
    もう少し詳しく言おうか…
    例えば俺が何か…そうだな、このクッションに触れたとする。
    俺のこの指先の接触面は即座に触れた物の分析をし、このクッションカバーがポリエステル素材で出来ている事、そしてその中身が真綿だという情報と、指先に受ける反発力を電気信号化して脳に送りこむ。
    すると俺は受け取った脳内でこう思うんだ。
    「おぉ、なんて柔らかい肌触りだ。ふわふわしていて弾力が心地良い。ずっとこうして触っていたいな。」
    ってね。

    他には…そうだな。
    例えば俺の愛しい恋人の頬に触れたとするだろ?…なんだよ、そんな顔しないで最後まで聞け。
    俺はこの精巧な機械の手のひらで彼の頬にそっと触れる。彼はきっと少しびっくりしてから、あの愛くるしいオッドアイをキラキラと滲ませて擦り寄ってくるだろうな…んフフ…賭けてもいい。
    おっと、話が逸れたなスマン。
    俺が浮寄の頬を撫でたとするだろ?
    そしたら俺の手のひらのパーツは触れた物がどんな物質でできていて、俺の手のひらとの強度にどれくらいの差があって、どれくらいの熱を持っているのかを分析するんだ。
    あぁ、その熱がどのくらいの速度で上昇しているかも解るな。
    もちろん、その科学的アプローチをそのまま脳で受け取ることもできるが俺はそれを望まない。
    だってそうだろ?日常で触れるものの全ての材質だの硬度だのをいちいち知ってどうする?…そんなのは必要ない。
    俺が欲しいのはもっとも人間らしい「感触」だ。
    俺は手のひらから送られてくる電気刺激によってこう思うんだ。
    「あぁ、なんて白くてすべすべした肌触りだ!瑞々しくひんやりしていて思わず抓りたくなるじゃないか!」
    ってね。ふははははは…だからそんな目で見るなって!

    こうやって得られる情報は実にスムーズに脳へと送られて生身の肌が得られるのとほぼ同じ感触を獲得できる。
    そう、疑似体験じゃないか、という奴もいるだろうな…本物ではないと。
    それがどうした?
    俺は一向に構わないさ。だってそれが俺の得られる唯一の情報なのだから。俺しか知らない情報だ。充分だろ?

    あぁでも、例外はあるぞ。
    俺は浮寄を抱きしめる時は必ず胸で受け止めるんだ。この胸で浮寄のぬくもりと肌触りを感じるんだ。直に浮寄を感じることのできる場所だな。まぁそれは他の場所でも出来るが…フフ…言わないでおくか。
    浮寄は俺のオモチャパーツの部分も漏れなく愛してくれている。あぁちゃんとわかってる。
    だが彼のあのふわふわな髪の感触も濡れたまつ毛も流れる涙も、俺はこの胸で受け止めると決めているんだ。
    何故かって?

    俺のぬくもりも伝えたいからさ。
    分け合いたい、といった方が正確か?
    わかるだろ?

    あぁ、それと

    もっと重要なことがある。知りたいか?

    ふふ…いいだろう。浮寄には秘密だぞ?

    俺の機械部分と生身の部分の繋ぎ目はとても敏感なんだ。この事は浮寄も知ってる。
    だが理由までは知らない。今だけ特別に教えてやる。耳をこっちに…

    さっき説明したように、機械部分はその表面が獲得した情報を元に電気信号として脳内へと伝わる。
    そして生身の部分は…これも似たような仕組みだろうが神経系が同じように脳に伝える。

    じゃあ繋ぎ目の部分はどうだ?

    もし浮寄がその部分にキスをしたら…?

    んフフ…そうだよ。
    素肌に伝わる感触と、機械に伝わる感触が同時に俺の脳内へと飛び込んでくるんだ。
    そう、同時に。

    触れるポイントがあまりにも近いと人間は刺激を「1箇所」だと認識してしまうからな。
    ピンセットで実験してみるといい。
    目を閉じて、ピンセットを肌に充てて、ゆっくりとピンセットを絞っていくと…
    そう、いつの間にか脳内では1本の金属に触れられていると錯覚するんだ。

    俺の脳内でも同じことが起こる。
    「そこ」に触れられると同じ情報が倍になって伝わってくるんだ。
    早い話が感度が倍になったのと同じになる。

    すごいだろ?
    これこそサイボーグの特権てやつだ。
    おっと、浮寄には内緒だぞ?
    ズルいって怒り出すからな。ふははは…

    何しっぽ振ってんだ?
    お前はダメだぞ。加減を知らなそうだからな。
    こら、やめないか。
    ちゃんと遊んでやるからおっ被ってくるな。

    こら!あははははは…



    ーーーーーーー



    さっきから彼は大きなモフモフとなにやら密談をしながらじゃれ合っている。
    こういう子供っぽい事を時々するんだこのひとは。

    ズルいじゃないか。

    おれは犬の言葉が解らないから彼の愛犬に「ねぇ、ふふちゃんは何て言ってたの?」なんてコッソリ確かめることもできないのに。

    どうせ後で訊いたって教えてくれないんだ。
    そうやって拗ねてみせると彼は余計に喜ぶ。

    悔しいけれど、そんな彼のイタズラな笑顔もおれは好きでたまらないんだ。

    まったくもう…

    「コーヒー入れたよ。」
    「あぁ、ありがとう。」
    「なに話してたの?」
    「それは言えないな。」
    「………」

    わざとらしく頬を膨らませると彼は目尻を下げながら嬉しそうに笑った。
    そうしてゆっくりと両手を広げるから、おれは観念してその腕の中に包まれる。

    ホントにズルいよその笑顔。
    まぁ、いいんだけどね。

    引き寄せられるまま胸に頬を埋めると

    彼の温かなぬくもりと、確かな鼓動が頬に伝わった。



    end.
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