オリジBL【隆弘の過去(中学生)】
・当時からバイセクシャルだった隆弘、中学2年生のとき、初めて男の恋人ができる(1年先輩)
・特に問題なく1年が過ぎた頃、二人は大喧嘩する。
雨の中傘も差さずに出ていった隆弘は、途中で車に衝突されそうになるが、それを追いかけてきた先輩に庇われる→そのまま先輩は死亡
謝ることすらできずに大切な恋人を失った隆弘は表情も失い、なおかつ自分の責任を強く感じ二度と恋愛はしない。幸せになることは許されないと自身を戒める。
【出会いとその後】
高校にて中学時代の親友と共通の友人という立ち位置で藤堂と出会う。その頃は親友を真ん中に置いた関係だったのでそこまで接点はない。むしろ、藤堂側は、あまりいい印象を抱いていなかった。
原因として藤堂はその親友を好きであり、いつも一緒にいる隆弘に嫉妬していた為。
ある時、藤堂がひた隠しにしていた親友への想いを隆弘が当ててしまう。そこから二人の関係は歪なものになっていく。
隆弘の口封じの為に、その身体を藤堂は抱いた。
そんなことをしなくても言わないのにと、隆弘は思ったけどもはや色んなことに対して諦めていたので何も言わなかった。
セフレ関係になった二人。もちろん親友には内緒で。
しかし藤堂には隆弘以外にも相手がたくさんいる。だから別に隆弘じゃなくても問題ない。ただ口封じのためと自分に言い聞かせ、隆弘を相手に選ぶ回数が増えていく。彼の初めてではない様子にどことなくモヤモヤする気持ちを抱えながら。
一方隆弘も、藤堂の色んな一面を知る度に胸がズキズキと痛むようになる。藤堂の相手に対する嫉妬だと気付いてはいたが、見ぬふりをした。
これがお互いに対するどういう感情なのかわからないまま時は過ぎていく。
イライラしていた藤堂は隆弘と距離を置くようになる。しかし、たくさんいるセフレ達と遊んでも満足しない。そしてついに、反応しなくなってしまった。そこで藤堂は隆弘に対する感情を認めるしかないと悟り、誤って、告白して1からやりなおそうと決意する。
距離を置かれた隆弘は、徐々に精神が摩耗していく。
別に自分たちはそういった関係ではない、ただの口封じで性欲処理で。そして自分は恋をしてはいけない。幸せになってはいけない。自分をがんじがらめにしすぎて息ができなくなりそうだった。
そんな折に隆弘は見てしまう。藤堂がセフレの一人とキスをしている姿を。
関係をもってから数ヶ月二人の間にセックスはあれどキスはなかった。そして、その光景が引き金となり隆弘は藤堂への思いを自覚して、自ら壊した。
藤堂は隆弘に想いを伝えるべく、自身の身の回りを精算して回っていた。とにかく真っ白な状態でちゃんと隆弘に向き合いたかったのだ。その際に一人のセフレにキスをせがまれ、した。藤堂に気持ちなどは微塵もない。背後で音がした。振り向くと見知った後ろ姿が走り去っていくのが見えた。隆弘だ。
すごく嫌な予感がした。
隆弘は、絶望していた。与えてくれない藤堂に、求めてしまった自分に。彼以外を好きになってしまったことに。だから隆弘は逃げた。もう疲れてしまっていたのだ。
嫌な予感の元藤堂は隆弘を探す。見つからない。どこにもいない。焦りが生まれる。はやく見つけてやらないと、やばいことになる気がしてたまらない。
ふと初めて関係をもった屋上か脳裏に浮かぶ。いないかもしれないが、藤堂は足を屋上にむけた。
屋上は静かだった。ハズレかと引き返そうとしたときに足元に落ちてる何かを踏んだ。小さな薬入れ。
心臓がいやな音を立てる。藤堂は、屋上の裏側、視界には入らないところへとあしを向ける。
そこに隆弘はいた。眠っていた。周囲に散らばる白い錠薬を見て、藤堂は青ざめ、崩れ落ちる。助けなきゃだとか救急車だとかどうにかしなくてはいけないのに、身体が動かなかった。
その時、偶然にもスマホがなった。親友だ。
藤堂はどうにかして電話をとり、小さな声で助けを求めた『隆弘をたすけて』と
病院に緊急搬送された隆弘。一命は取り留めたが、運び込まれてから2週間。目を覚ます気配はない。
藤堂は時間がある限りそばにい続けた。
彼が起きたとき、真っ先に思いを伝えようと心に決めて。
隆弘は夢を見ていた。
暗闇の中、どれだけ歩いてもなにもない空間をただ歩き続ける。自分は死んでしまったのか。きっとそれも悪くないと自嘲気味に思った、その時、暗闇しかない世界に一つの光が生まれた。その光は人の形をしていた。彼だ。初めて愛して失った彼。
彼は笑った『お前はまだここにくるのは早いよ』と
隆弘は首をふる。もう疲れてしまったのだと。そっちへ行きたいのだと。
彼は、困ったように笑った。『せっかく俺が助けた生命を蔑ろにするなよな』と。『それに』
『お前を呼んでるよ』
上を見ると別の光が見えた。それは腕の形をしていた。彼は笑って『じいさんになったらまた会おうな』
と隆弘の背中を押す。
その手をとってもいいのだろうか。わからない。それでも、
『俺は、お前の隣にいたいよ…藤堂』
その手を取った瞬間視界が一気に白くなった。
ずっと動かなかった隆弘の手が小さく動く。それに気づいた藤堂は思い切り手を抱きしめて、祈るように叫んだ。『戻ってこい』と
固く閉じられていた目が開く。見慣れた黒い瞳。
その瞳がゆっくりと動き、藤堂を捉えると、ずっと出してなかったせいかとてもかすれた小さな声で呼吸器の向こう側からポツリと呟いた。
『すきだよ、藤堂』