無題。ダルスがジャスティスの異変に気づいたのは、昼過ぎだった。
もともと彼は予定がなければ昼過ぎまで寝ているタイプで、それでも毎日起きてきて昼飯は食べていたから、誘いに行ったのだ。そうしたら、布団の中で苦しそうにしていたものだから、心臓が止まるかと思った。
手を当てた首筋は熱く汗ばんでいて、ひどい熱が出ているらしいことは解る。大慌てで桶に水を汲んできて、タオルを絞って顔と首元を拭いてやると、うっすらと目を開いた。
「すまん」
掠れた声が、ぽつりと溢れる。いつもの彼からは想像できないほど弱りきった声だった。続けて咳き込んだ喉が辛そうだ。
起きあがらせるのが忍びなくて、コップに汲んだ水を煽って唇を重ねた。ゆっくり落としてやると、うまそうに嚥下する。
絞ったタオルを額に乗せてやれば、気持ち良さそうに小さく息を吐いた。呼吸も少し落ち着いたようだった。
「気にせず寝てろ」
次に起きたら、果物でも剥いてやろうか。
「あらあら」
「まあまあ」
思い思いに果物や粥を持参して様子を見にきたヒノエとミノトが、ジャスティスの家の玄関から中を覗き込んでいる。
「ほらほら、邪魔しちゃだめだよ」
後ろからアルマに声をかけられて、二人とも振り向いた。楽しげな笑みが隠しきれていない。
「滅相もない」
「お任せしましょ」
きゃらきゃらと笑いながら去って行った姉妹を見送って、一度室内を振り返り、へしょりと垂れた耳と尻尾に、苦笑する。きっと、治るまで泊まり込むのだろう。
「移らなきゃいいけど」
そのときは、そのときだ。