玄妙な寂静と悲鳴嶼が鬼殺を終えて藤の家に着いた頃、寅の五更にはまだ間があった。現代風に言えば午前三時か四時頃だ、というのが空と風の具合から盲目の身に季節が触れる。藤の家の者は心得たもので明け方前のこの昏さの中で起きて鬼殺隊士を待っていて、こんな手遊びがありますよと古い竿を渡された。
どこの瞽女の残したものか、月琴だった。悲鳴嶼も田舎で聞いた覚えがある。風の音の合間に悲しい音が聞こえたものだった。都会なら雅に聞こえたかもしれないが、地元の辺りは寂しくていけなかった。子供が悲しがって泣く種になる。
指ではじいて、音が違う。爪で弾いていたのだと初めて知った。それで玄妙な寂しさの弾ける音になる。斧と鎖と鉄球の物凄まじい日輪刀を扱う無骨で、壊さないよう。
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