暗夜身体の奥底から燃え滾る紫焔を呼び起こす。加減はしなくていい。焔を呼ぶ時、それすなわち相手の聲を奪い去るべき時だから。爆発的な熱は己の肌をも焼きかねない勢いで体外へと流れ出ていく。灼熱に覆われる身体は歓喜に満ちていた。あまりにも圧倒的、それでいて美しい焔。それが俺の意志で動き、舞い、全てを燃やし尽くすと思うとたまらなく興奮する。蹂躙に悦楽を覚えているわけではない。己の意志で身体が動く、己の意志で行動を決める。意のままに力を振るうことができる、その自由が叫び出したくなるほど嬉しかった。
「燃え尽きろ……!」
高揚をそのままに拳を突き出せば、柔らかな人の身体は簡単に押し負ける。ずぶりと食い込んだ腕に伝わる生暖かな内臓の温度。雨のように跳ね返る血飛沫。命を屠る感覚。
8057