いつでもあなたにやられてる「俺には我慢ならねぇモンが二つある」
というのは恩人であり友人の現役弁護士・天国獄の口癖である。息をするように、その枕詞ひいては前置きが紡ぎ出される。十四はナイフのような切れ長の目を真っ直ぐに見つめて、次の言葉を待つ。
「ひとつ。冷め切ったコーヒー」
チン、と目の前のコーヒーカップを爪弾く獄。半分ほど注がれたコーヒーからはもう湯気は出ていない。静かなものだ。
冷め切ったコーヒーかぁ。それは自分もあまり得意でない。冷めることで、酸っぱくなるからだ。お揃いだなと思って心を躍らせた。彼がらみのことだと、どんなちいさなことでも嬉しくなってしまう。
「ふたつ。……性懲りもなく職場に乗り込んでくるガキだ」
獄は鋭い眼光を向けてくる。かっこいい。まるで時代劇に出てくる正義のサムライみたいだ。
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