雪メイ『優しい夜明け』 雪原先生のせいではもちろんないのだが、先生の誕生日はタイミングが悪い。歌舞輝町のクリスマスはカオスを極め、事務所にいても救急車のサイレンが一晩中聞こえてきた。一番街医院にも相当な患者が搬送されたものと思われる。
しかも今年のクリスマスはちょうど土日に被っていたから、例年以上の忙しさなんじゃないかと事務所の面々が渋い表情で言っていた。
そして祭りが終わって喧騒が去った十二月二十六日、いつもの歌舞輝町を歩いて私は一番街医院へと向かう。
「お疲れ様です、これ皆さんでよろしければ……」
心なしか屈強な看護師さんたちの表情にも陰りが見える。心ばかりの差し入れとしてゼリー飲料をお渡しして、先生のいる診察室へと足を向けた。
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