「はな……せ！」
下層を探索していたトビアスが必死に抵抗する。だが、その抵抗はしなやかな触手には無意味だった。そして触手がいきなりトビアスの口の中へと無理矢理入り込んできた。
「む！むーー！！」
口の中に入り込んだ触手に息苦しさを感じ、段々と舌が痺れてくる。ビリビリとした感覚が来たかと思うと、何故か体がゾクゾクとしだす。
(おかしい。毒は効かないはずなのに、どうして)
触手が口の中でジュボジュボと動く度にゾクゾクと、腰から下が落ち着かなくなる。ヌメヌメとした触手が全身を撫で上げ、遂に服の中まで入り込む。胸の飾りを掠り、チロチロと擽るように刺激される度に甘い声が出てしまいそうになる。ビクビクと震える体を更に弄ぼうと、ズボンを下着と共に脱がし、陰茎にヌルリと絡みつきだした。そのままちゅこちゅこと擦り出すと、与えられた刺激に目を見開き、堪えきれずに声が出てしまう。
「あ！ふあ、や、やめて！」
いやいやと頭を横に振るも、触手にその反応は意味はなく、弄ぶ動きがさらに激しくなる。遂に触手は、トビアスのお尻の奥に触れてきた。なんとも言えない不快感にトビアスが怯えるも、お構い無しに体液を入口に馴染ませていく。くち、くち、と濡れた音を出すと、つぷりと中に入りだした。
「あ、あ、あう……」
指くらいの太さのものに中を掻き回される感覚は、圧迫感と不快感で埋め尽くされている。そのはずなのに、動かれる度に下腹部の奥からぞわぞわと、気持ちいいという感情が湧き出してくることに戸惑いを感じてしまう。
「な、なんで……？あ！あん！そこ、やめて、くだ、さ……ふあ！」
クチュ、クチュと触手が、中を解すように蠢く。時折擦るイイ所によって今や快感が全身を駆け巡っているトビアスは甘い声をあげ続ける。頃合だと感じたのか、トビアスの中を犯していた触手がずるりと出ていく。中の喪失感をぼんやりと感じる。これで解放されるのか、少しほっとしたが、それは違うのだと目の前にある触手によって嫌でも思い知らされた。さっきまで自分を嬲っていたものとは違う、太くてビクンと震えるそれはさながら勃ち上がった男性器で、恐らく種を植え付ける器官であろうことが分かる。それが嬲られていた穴に押し当てられる。こんなのが入ったらと考え、トビアスはぞっとして子供のように泣きじゃくった。
「やだ……！そんなの入れないで！お願い！やめて！やめて！！」

ここで間に合ったパターン
くぷ、と先端が入る。そこから更に奥に入り込もうとしたその時、拘束が解ける。苦痛に悶えるように触手が暴れるも、更に何者かによって切り捨てられた。拘束が解け、立てずに崩れ落ちる体を抱きとめられた。見慣れた赤髪が見え、息も絶え絶えに名前を呼ぶ。
「バ、リー？」
「大丈夫か、トビー！？」
聞きなれた声を聞き、安心したのか一気に意識が沈んだ。慌ててバリーは抱え直し、方舟の医務室へと向かった。

「うん、あとは目が覚めれば大丈夫よ」
「ありがとうございます。ロザリーさん」
診察結果を聞いて安心し、そのままトビアスの傍に座る。眠る顔は見つけた時よりも顔色は良くなっているが、眉間に皺が刻まれている。悪い夢を見ているのかもしれない、そう思ったらバリーはトビアスの手を握り、頭を撫でた。かつて自分がトビアスにしてもらって安心できた事をこうして本人にやることになるとは、と思わず口が緩む。閉じられていた瞼が震え、覚醒が近いことを悟るとバリーが立ち上がる。ゆっくりと開かれた目はバリーを見つけると驚いたように見開かれた。
「トビー！良かった。痛い所はないか？」
「バリー。どうして君が？それにここは」
「ここは方舟の医務室。トビーが下層に行ったって聞いて直ぐに追いかけたんだ。そしたら、あ、あんなことになってて」
顔を赤くしながら目を逸らすバリーを見て、あの時の自分の姿を思い出す。あられも無い姿を見られた事にトビアスも顔を赤くする。
「ごめん、あんな姿…見せちゃって」
「ト、トビーは悪くねえって。お、俺も気にしてねえし」
声色は動揺したように揺らぎ、目を合わそうとしないバリーに、トビアスは不信感を抱く。まさか、あんな得体の知れないものに乱されたから、汚いと思われてる？そんな考えが浮かんで問わずにはいれなかった。
「なら、どうして僕を見てくれないの？」
「そ、それは……こ、恋人のあんな姿見て、何も思わないようにしろなんて無理だろ。思い出しただけでもやべえのに、かと言ってトビーにこれ以上無茶させたくないからこうするしかねえんだよ」
嫌悪ではなく、自分に劣情を抱いた結果の行為だったのかと知ると、トビアスの顔がさらに赤くなる。痛みは感じないと、常に言っているのに気遣ってくれる優しい恋人の熱を、今どうしようもなく感じたい。そう思いトビアスがバリーの唇に軽くキスをする。驚き固まるバリーを見てふふっと笑う。そして耳元で追い打ちをかけた。
「ねえバリー。あの触手の感触が、体の中に残っちゃってるんだ。だから、君ので上書きしてくれないかな？」
そう言った瞬間、トビアスの視界がバリーから天井へと変わった。自分を組み敷く恋人の目が獣のそれへと変わったのを感じ、トビアスはさらに笑みを深くした。

「ふあっ、あ、あ、や、はげ、し」
「悪ぃ。色々、我慢できねえから、このまま」
「あ、あ、あ！」
いっぱいに入っても尚収まりきらないバリーのモノは、圧迫感が凄い。だが、その存在を感じると、胸の中を温かい何かで満たされていく。いつもは加減してくれているバリーが、こうして激しくしてくれているのも、トビアスにとって嬉しいことだ。恋人で満たされている事実に胸いっぱいになりながらトビアスに限界が近づいてきた。バリーも堪えるように腰の動きがより重くなる。トビアスがバリーに抱きつき、蕩けながら懇願した。
「バリー、きみも、いっしょに」
「くっ！トビー、そんな可愛い顔、反則だぜ。一緒に、だな。分かった」
そう言うとバリーがトビアスのいい所を激しく突く。望んだ快感に呑まれてトビアスが喘ぎ、遂に果てる。中の締めつけにつられてバリーも果て、トビアスの中へと白濁を吐き出した。既にいっぱいなトビアスの中に吐き出されたそれは、トビアスの腹を微かに膨らませる。バリーが入れていたモノを抜くと、出口が出来たことで勢いよく白濁が流れ出てきた。尻を伝っていく感覚にトビアスがぼんやりしながらつい呟いた。
「あっ……バリーの、流れちゃってる。熱いの、いっぱい出ちゃってる」
蕩けた恋人から発せられたその台詞は、バリーの理性を思い切り揺さぶった。最後まで堪えきれたか、気づいたトビアスに更に揺さぶられて再度貪ったかは、2人しか知らない。

間に合わなかったパターン
「あ、あああ！！やだ！ぬい、てぇ！」
トビアスは自分の中に性器のような触手が入り込むのをまざまざと見せつけられ、悲鳴を上げる。中をミチっと埋めるその触手がブシッ、と何か液を吐き出した。すると、体が先程とは比にならないくらい熱く、下腹部も疼いてしまう。あれほど嫌だと思っている触手を、体が勝手に求めてしまう。入口がキュッと締まり、中もヒクリと疼きだす。トビアスの口からも甘い声が漏れだした。
「ふえ、や、なっ、んで？……あ、ナカ、ダメ、うごくの、やめ、てぇ」
戸惑うトビアスに、触手は遠慮なく動き出した。与えられる刺激は確実にトビアスに快楽を与えてくる。ぐちゅぐちゅと激しく出入りされているトビアスの秘部はすっかり蕩けて触手を目いっぱい頬張り、中でも触手を愛撫していた。その刺激が好ましいのか、触手の動きがより激しくなる。遂にトビアスの口から喘ぎ声が漏れてきた。
「あ！や、そこ、は！……あん！や、はぁん！ごりごり、だめぇ！きちゃう、からぁ！」
トビアスの限界が近いのを察したのか、触手の根元がボコリと膨らむ。そしてその膨らみの中身は、トビアスの中へと注がれていった。
「や、なに？あ、や、ぁ！ボコボコしたの、中、当たって、あ、あああん！」
注がれるそれが敏感な中をたっぷりと刺激していく。壁をグリグリと刺激していくそれはトビアスには耐えきれない快楽を与え、遂に限界を迎えたトビアスは意識を手放した。
種を注いだ母体を巣に連れ帰ろうと、トビアスの体に巻きつこうとしたその時、何者かによって一閃された。切り裂かれた触手は苦しそうに地面でのたうち、解放されたトビアスが抱き上げられて連れていかれた。

「まずいわね、何か植え付けられてるみたい」
「そんな！どうすればいいんですか？！」
「触手みたいな植物だったのよね……もしかしてこれかしら？」
「おお！こいつだ！すげーぜロザリーさん」
図書館で借りてた植物図鑑に偶然載っていた例の植物の特徴を見て、戦慄する。他の生き物に種を植え付けて子を増やす。しかしそれは、他の生物の精液に弱く、種にかかると途端に体内から排出されるとまで。この説明を見た時、バリーは目を見開く。
「な、なあ、ロザリーさん。トビーの中の種出すとなると……」
「ふふふ。頑張ってね。私は暫く席を外すし、誰も入ってこないようにしておくから気にしないでね」
微笑みながら出ていくロザリーを呆然と見送る。暫くするとん、と小さな声と共に衣擦れの音がする。トビアスが起きたことに気づくと、バリーは直ぐに駆け寄った。
「トビー！体調はどうだ？」
「バリー。う、うん。大丈夫。でも……お腹に違和感が」
「そ、それなんだけどよ。実はな」
お腹をさするトビアスに、バリーが種の排出方法を話す。それを聞くと、トビアスの顔が赤くなっていく。
「バ、バリー。それって、バリーのを、中に、ってこと、だよね？」
「お、おう。……やっぱり、嫌、か？」
「ち、違う！……バリーは嫌じゃないの？その、僕を抱くの。あんな植物に、めちゃくちゃにされた体なのに」
「な！それはトビーのせいじゃねえだろ！今だってあいつらのがトビーの腹の中にあるってだけでむかついてるんだ！｣
肩をガッシと掴み目を見て力強く言われ、トビアスは驚く。バリーの嫉妬とも取れる言葉を初めて聞いたのと、こっちが気にしている事を微塵も気にしていない事に。ああ、彼を好きになってよかった。その気持ちを乗せたまま、バリーに抱きついた。
「ありがとう、バリー。じゃあ、お願いしてもいいかな？お腹の中の、全部出すの手伝って」
「お、おう！」

「ん、あっ。ふあ」
「はあ、はあ。ちっと、抜くか？入れすぎてるか？」
「はぁ、へい、き、だから。もっと、きて。ちゃんと、僕で気持ちよく、なって？」
「んな事言ったって、トビーも気持ちよくならないと意味ねえよ」
「ど、して？バリーのを出せば、種は出てくんでしょ？僕が良くなるのは、関係ないんじゃ」
「そりゃ、トビーが気持ちいいって思ってくれた方が俺が嬉しいからだよ。ああ、愛し合えてるなー、好きだなーて、胸があったかくなるんだ」
「そう、なの？……なら、もっと動いて？バリーの、あったかくて、固くて、動くと溶けちゃいそうに、気持ちいいから」
「なっ！そ、そんなこと言われると、止まんなくなるぞトビー！」
「うん、いいよ。止まら、ないで、僕の中、いっぱいに、してほしい……あっ！ひあん！」
腰の動きを壁をえぐるように変え、トビアスの感じる場所を遠慮なく刺激する。それによってトビアスが甘く喘ぎ、きつく抱きつく。そろそろ限界が近いことを察すると、トビアスの最奥をグリグリと突いていく。それによって中がヒクヒクと激しく絡みついてきてバリーの射精を促す。そして遂に、2人は限界を迎えた。ビュク、ビュクと脈打ちながら注がれる熱は、トビアスに植え付けられていた種にもかかり、モノを抜いた後にコポリと全て出てきた。
「こんなのが入ってたのかよ。あ、もう違和感はないかトビー？」
「うん、もう大丈夫。あのさバリー」
「ん？なんだ？」
「もう1回、抱いてくれる？もっとバリーの熱を、感じたいんだ」
控えめながら大胆な誘いに、バリーはキスで応じた。舌を絡め、互いを貪るそれから、お互いの熱が分からなくなるくらい抱き合った。