お料理特訓VTRは、デクが少し悩んだ末「キレイにオムレツを包めるようになりたいです」と目標設定するところから始まる。午後8時と小学生でも見られる時刻の人気バラエティなので、料理といっても難しすぎず、そんな感じで低年齢層や一般家庭に共感してもらえるレベルが主だ。
ひき肉を炒め、何度も不格好な卵で包んでは苦笑しつつも次々スタッフに振る舞い、時折テレビらしくプロの技を伝授されながら実戦していく。どうせならオムライスも作ろう!と途中でケチャップライスを作るターンも入り、デクのブツブツ癖もあって映像には1人しか映っていなくても賑やかで飽きない。
そしてコツを掴んできた数回目、とうとう「やった! 出来た! どうですかこれ、キレイにできましたよね!?」とカメラに向かって笑顔でお皿を向けるデクにスタジオ映像のワイプでは拍手が起こった。
デクは「家でもちゃんと再現出来るようにもう1回おさらいしとこう」とダメ押しでもう一度、計何個目かの卵を消費にかかる。
デクと仲がよく一緒に住んでいることも知られているショートは、さぞかし幸せそうな顔でこのVTRを見ていただろうと思いきや、笑顔は笑顔だがデクがオムレツを成功させたあたりでいよいよ眉だけがどんどん下がっていった。スタジオ内や視聴者の予想外で、これには疑問の声が上がる。デクがきれいなオムレツを習得してまず誰に振る舞いたいと考えているかなんて、二人の関係を知っている旧友たちにしたら聞くまでもないので尚更だ。
「仲が良いショートなんかは、実際にあれをデクから振る舞ってもらえるんじゃないですか?」
そんなMCの振りにもショートは「ええ、まぁ、そうかも」とどこか上の空な返しをしてしまい、どうした、と追求の声がかかる。
対外的には親友同士のルームシェアだが、緑谷と轟はその実付き合っている。緑谷が料理の腕を「一般的なレベル」くらいまでは、と上げたがっているのを轟は知っていた。
朝ご飯を担当してくれた時にオムレツいつも不格好になっちゃうなぁ、とこぼしていて、普段目玉焼きばかりなのを「いつかは」と言ってくれていたこと。それで今回デクの料理目標設定を聞いたときからソワソワと嬉しさがあった。でも、だからこそ、自分のためにああして頑張ってくれている姿を、卵を割るたびに一喜一憂していたその様を、轟は間近で見たかった。隣で一緒に体験したかった。失敗作を分け合ったスタッフが本気で恨めしい。
「俺もあの場にいたかった……っ!」
ガチすぎるトーンの叫びに、その日一晩中トレンドが沸いた。
緑谷くんはそんなオンエアを見て、「ご、ごめんねぇ……!」て少し狼狽えるんだけど、未だに思いも寄らないところで自分はこんなに轟くんに思ってもらっているのか、ということを知ってくすぐったくなるね……。
自分の為を思ってしてくれることなら尚更、できるだけ全て分かち合いたいと思っている(そしてだんだんそれを緑谷本人にも言うようになる)轟くん、いると思います🦭
お粗末様でした🥚