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    女🍓

    @GIRL_0908

    ちょーっと不健全な絵をあげるタイプの女だよ♡
    サイブラが生き甲斐
    最近は途中経過しかあげてねえっす

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    女🍓

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    にぴぴぴぴ🍋🪣小説第2弾ちゅ

    洞察

    赤橙色の空の下、孤高に立つ小さなラボで、一人の科学者が頭を捻っている。数時間前から何度も試験管を入れ替え、測定値を確認しては溜息をつく。
    「……おかしい。再現性がない。理論上、間違っていないはずなんだが…」
    あれやこれやと手を加えても、寧ろ遠のいていく。段々苛立って手荒になっていく科学者の手。それを眺めるもう一人の視線が、さらにそれを加速させる。
    「まだやってんの」
    とだけ語りかける、頼りない助手の声。
    「やかましい。放っておけ。」
    「一応俺あなたの助手なんですけど」
    「道を降りたお前に分かるものではない。これは比較的最新の研究だ。」
    「じゃあなんも言わん」
    数秒の会話で交信を諦め、作業机に手をつき、助手は散らかったメモの山を覗き込む。
    「…落ち着かんのだが」
    「いるくらい許せよ、手伝おうとしてんのに」
    「何を偉そうに」
    なんかしたんかというくらいに当たりが強い。彼は常にそういう奴だ。



    六度目の失敗で色々とはち切れそうになりかけた時、助手がひとつの資料に指差した。
    「…これじゃね?温度設定、予定より±2度ずれてる」
    唐突な助言がいきなり送られた。
    「ほれ、そこのパラメータ。設定温度、こっちの手順書と違う。前提条件崩れてるから、理論通りの反応にならないんじゃねえの?」
    「は?温度?そんな序盤で見落とすほど私は愚かでは…」
    そういいながら、指定のものに目を通す。

    …確かにずれていた。基本的な箇所で、しかもずっと見落としていたとは。
    「…………っ」
    口を開きかけて、すぐ閉じる。そのまましばらく沈黙したのち、吐き捨てるように言った。
    「……偶然だ。」
    「何がだよ」
    その声に返事もせず、誤った箇所を直す。いや、礼くらいしろよ。
    「……目敏いな、お前。」
    不器用か。



    「まあその辺は、昔俺もよく見落としてたし」
    「昔…」
    助手も、かつては科学者を目指していた。
    が、脆弱故に落魄れた。
    もし、もしもそうでなければ、ただ隣にいるだけでなく、肩を並べられたのだろうか。

    「…その程度の知識でいい気になるな、はぐれ者の分際で。今の私の足元にも及ばんことを自覚しろ。」
    「なんで怒ってんだよ。その程度の知識を見落としてたのは誰でしょうかね」
    「黙れ」



    もしもは、未来には来ない。
    あくまで可能性であり、実現しない夢のような話。それでも、もし二人が生まれ直せたら。何もかもなかったことにできたら。
    最初から、友達になれたなら、なんて。
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