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    ichinii33

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    ichinii33

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    つまりかきかけ しかも夢主の名前がハルちゃんのまま 完成させてーな 完成させてーよ

    書いてる先輩のユメショの部分 秋になると、3年生の卒業がじわじわと近づいていることを嫌でも実感させられる。夏服の時期が終わって、先輩は初めて会った頃のように黒い学ランを着るようになった。テニスの大会が夏に終わった後は、不二先輩は卒業アルバム制作委員会の活動にいそしむようになり、一度カメラを持って何かの撮影をしているところも見かけたことがある。
     なんか、卒業しちゃうんだな、不二先輩って。
     寂しいとか悲しいとかではなく、いまいち実感が湧かないから、ぼんやりとそれを受け入れられないままでいた。不二先輩とは去年委員会が一緒だったのがきっかけで知り合ったけれど、その後は廊下ですれ違ったら挨拶をしたり、図書室で偶然会っておすすめの本を紹介しあったり、仲は良いけれどあまり学年を意識しない関係だったから、なおさらだったのかもしれない。
     ともかくそんななんとも言えない心持ちの中、移動教室のおりに通りがかった3年生の教室がある階の廊下に、たくさんの写真が貼り出されてあったのだった。
    「あ!3年の修学旅行の写真だ。……ねえハル、見ていっていい?大石先輩の写真探したいな」
     隣を歩いていた友人は足を止めてそう言う。私が「うん」と返事をするより先に、もう写真を1番から順に真剣な目で見始めているようだ。……この分なら、私が何に注目していようが彼女は気に留めない。それにさっきの授業が4限だったから今は昼休みで、時間も気にしなくていい。
     一瞬にしてそこまで思考を巡らせてしまってから、私はなんだか悪いことをしているような気持ちに駆られて、あたりを一度見渡す。時間が時間だから、私たちの他には雑談しながら写真を見ている生徒が数人いるくらいだ。それを確認した私は唇をひき結ぶと、わざとゆっくりした歩調で写真を見始めた。堂々としていれば怪しまれないからだ。いや、まあもしかしたら元から怪しむも何も私のことなんて誰も気に留めていないのかもしれないけれど、いかにも「そういう」感じの行動をしてしまうのは避けたかった。
     ……違う。そういうのじゃない。別に、そりゃあ待ち時間に写真があったら見るでしょ、普通。何が目的とか、そういうのじゃないから。
    下手な言い訳を頭の中で重ねながら、それでも視線は明らかにある写真を探していた。知らない3年生が笑顔を浮かべて、名所を背景にピースしている写真。おそらく宿であろう室内で歓談している生徒たちの写真。おそらく担任の教師であろう壮年の男性と肩を組んで映っている生徒の写真。そして、ついにそれを見つけた。
     ーー不二先輩だ。
     不二先輩は、知らない男子生徒と一緒に写っている。と言ってもカメラに意識を向けている様子ではなく、何かを話しているのか口を開いて、視線は男子生徒ではなく写真の外の何かに注がれていた。背後に写っている建物の雰囲気からして、どこか有名な建築物を訪れた際の写真なのだろう。自然な、ありのままの空気を切り取った感じがして、良い写真だと思った。
     ……そうつかの間しみじみした後に、お腹のあたりがもやもやと澱んだ。それは胸の辺りまでじわりと上がってくると、胸の締め付けと共に身体に広がる。
     私は不二先輩のことはそれなりに知っているが、不二先輩のことしか知らない。先輩の周りのことについては全くの無知なのだった。私と話す時は一対一だったからすっかり失念していたけれど、不二先輩にも所属するクラスがあって、同じ学年の友人がいて、例えばこういうふうに何か心の動かされるものに出会った時、ふと口を開いて語りかけるような誰かが当たり前にいるのだと思うと、どうしようもないことなのに、どうしようもなく形のないはずの何か柔らかいものがぐにゃりと歪むような心地がする。もし私が先輩と同じ学年だったなら、こうして修学旅行に一緒に行って、カメラに向かって一緒にピースをしたりして、もしかしたら持参のカメラで私のことを撮ってもらえたりもするかもしれなかったのだ。
     しばらくその写真を見つめて立ち尽くす。もう一度、周囲をのろのろと見渡す。友人は目当てのオオイシ先輩の写真を見つけたらしく、番号をメモしている。じっと写真を見る。……やっぱり良い写真だ。目を少しだけ伏せた。
    「あれっ、ハル、不二先輩のファンだっけ」
     ふいに横からかけられた声に目を瞬かせる私を気に留めた様子もなく、友人は首を傾げた。「かっこいいもんね、不二先輩。人気あるのわかるなあ……。ねえハル、これ買うの?多分他にも不二先輩の写ってるやつあると思うけど。私探そうか?」
     先輩って……、人気、あるんだ。いや、そうだよね。かっこいいし、優しいし、テニスも勉強もできて、ちょっとだけ変なとこまで完璧。人気が出ないわけがない。私が知らなかっただけだ。
    「いや……、この写真、素敵だし。これだけにする」
    「そう?じゃあ今度一緒に3年の先生にお金渡しに行こ。学年違くても日付あってれば受け取ってもらえるらしいから」
     でも、逆に考えれば好都合かもしれない。友人に「分かった。ありがと」と返事をしながら、最後にもう一度だけ写真の貼られている廊下の壁をちらりと見て、私は廊下を歩き始めた。
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