秘密基地、というにはあまりにも他人任せで無責任なものだったけれど、あのころの僕たちにはそんな場所があった。
施設を抜け出すさるちゃんの背を追って走る。畦道を軽い足取りで、用水路を飛び越えて、林を抜けた丘のあたり。建設途中のまま今は誰も来ない、二間程度の小さな小屋。
晴れた日には丘を駆け回った。風の強い日は上空を旋回する大きな鳥を見上げていた。一度か二度、夜に星を見たけれどそのあとすごく怒られた記憶がある。雨の日には、たくさん話して、歌をうたって、絵を描いて本を読んで、また話した。いつもいつも、手元が見えるかどうかもあやしくなるくらい遅くまでそこにいて、それからようやく、渋々と帰っていた。
いま、電気の通らないこの部屋は、あの夕暮れと同じ昏さを宿している。見上げる空からは雷鳴、吹き付ける暴風雨。慌てるのもバカらしくなるくらいの悪天候だ。抗いようもない。
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